職人とユーザーを繋ぐ、ビギンの新しいコミュニケーションスペース
20年の時を超え、復活した名作M-51
岡山県児島発のデニムメーカー、「ジョンブル」がヴィンテージのリプロダクトをさらに進化させた90年代の自社ブランド「ソーイングチョップオールズ(以下、SCO)」を蘇らせ、ミリタリーパンツの名作M-51を再構築。細部まで忠実にディテールを再現するために、自社工場の職人を鍛え直し、こだわりの一本を作りました。今回は、ブランド復活以来、定番品として高い人気のモデル「SC111」を、米国コットンをブレンドした素朴な風合いのバックサテンで表現。見た目も穿き心地も春夏らしい仕上がりです。ビギンファンディングのためだけに作った、購入者限定のオリジナルミリタリートートもついてきます。
岡山県児島発のデニムメーカー、「ジョンブル」がヴィンテージのリプロダクトをさらに進化させた90年代の自社ブランド「ソーイングチョップオールズ(以下、SCO)」を蘇らせ、ミリタリーパンツの名作M-51を再構築。細部まで忠実にディテールを再現するために、自社工場の職人を鍛え直し、こだわりの一本を作りました。今回は、ブランド復活以来、定番品として高い人気のモデル「SC111」を、米国コットンをブレンドした素朴な風合いのバックサテンで表現。見た目も穿き心地も春夏らしい仕上がりです。ビギンファンディングのためだけに作った、購入者限定のオリジナルミリタリートートもついてきます。
今回のテーマはヴィンテージの再構築。創業70年以上の歴史を誇るデニムメーカー・ジョンブルならラクに叶いそうですが、老舗ならではの問題と直面し、企画からローンチを迎えるまで、およそ4倍の時間が想定よりかかっています。
2022年1月、「ソーイングチョップオールズ(以下、SCO)」を20年の時を経て復刻。企画サイドと現場サイドのせめぎ合いから生まれた、同社の新しいモノづくりスタイルを体現します。なかでも、米国陸軍の歴史的名作「M-51カーゴパンツ」は、10年以上のキャリアを持つ縫製職人でも、一日に3本しか縫い上げられないほど手間がかかっています。
古着好きの情熱が呼び覚ましたSCO
実はSCOは、90年代にスタートしたブランドです。当時はヴィンテージ品を進化させたモノづくりをする、ジョンブルの生産技術の高さを象徴するブランドでしたが、2000年代に入り、時代が快適性や機能性を求める流れのなかで次第に休眠状態に。同社のなかでも存在感をなくしていました。
もう一度、自分が惚れ込んだ
モノづくりを取り戻したい
そんなSCOを復活させたのは、商品企画を担当する辰口さん。新卒でパタンナーとして入社してから今年で20年目、今はSCOのディレクターを務めます。学生時代からとにかく古着が好きで、その熱狂ぶりは“観賞用”のヴィンテージ品を何枚も所有するほど。ジョンブルへ入社を決めたのも、ヴィンテージ品をも超える高い技術に惚れ込んだからでした。
本社工場を取り仕切る仲井さんを筆頭に、10年前から世代交代と若手の育成に取り組んできています。特に縫製スタッフのスキル向上には力を入れており、これまでは担当のポジションを固定して生産効率を上げていましたが、今は一人ひとりが全てのポジションを担えるよう当番制に切り替えてオールマイティに技術を磨いています。つまり、ポケットだけ、ウエストだけという生産スタイルではなく、ポケットをやったりウエストをやったり、日によって縫製するパーツの変わる生産スタイルに変更したというわけです。
また、試用期間中の社員研修も独特。新入社員は全員、児島の本社工場でデニムを一本縫い上げます。その体験を通してジョンブルのモノ作りスピリットを受け継いでいくのです。
「今、生産の軸を担っているのは若手〜中堅のスタッフです。決まった誰かだけが作れる状態ではいけない。ベテラン勢が支えてくれているからこそできています」と仲井さん。
往々にしてモノづくりには、工場ごとに独自のやり方が必ずあるもの。ことSC111の縫製については、ディテールも多いし製作はどの工程も複雑難解です。「モノづくりに対する価値観を共有するのも大変で。効率を取るか、デザイン性を取るか。お互い5mmの差も妥協しない、せめぎ合いの末にSC111は誕生しました」。現場スタッフをオールランダーに育て上げるため、辰口さんも教科書のないジョンブルの服作りを伝えていきました。
「SC111には、なくてもいいけどあったほうがカッコいいディテールが、たくさん詰まっているんです。自ずと生産の難易度は上がりますし、作る側は本当に大変だと思います。でも、製作陣は私のこだわりを理解してくれ、手間がかかっても形にしてくれる人ばかり。キレイに縫って、早く縫うだけじゃない。企画の意図を汲み取ってくれる、ファッション的な鋭い感性があってこそのモノづくり。感謝しかないですし、それが今のジョンブルの強みです」。
岡山県児島は昔からのデニム産地なので、服作りは町工場が分業して行うことが一般的ですが、ジョンブルは裁断から縫製までを自社工場で一貫して行います。SC111についても同様で、仕入れてきた生地を裁断するために専用の機械で伸ばす延反(えんたん)からスタート。パターンに沿って一枚一枚、パーツごとに切り出していきます。
そこで重要なのがパターンの正確性です。一般的に5ポケットジーンズが11個のパーツで構成されているのに対し、SC111のパーツは25個。通常の2倍以上の数になると、パターンを引くのに緻密な計算を要します。
担当しているのはパタンナーの下宮さん。「ディテールがとにかく多いので、油断していると直ぐにパーツ同士が重なってしまうんです。インチごとに微調整も必要で、パターン上で交通事故が起きまくり(笑)」
SCOの魅力は、レプリカを作っているわけではなく、ディテールや雰囲気をそのままに時代に合わせたアップデートがなされているところにあります。
SC111はM-51ならではのどっしり感を残しつつ、大人っぽく穿けるように裾幅や丈を調整されています。「ベースモデルよりパンツの面積が小さくなるので、ディテールを全て盛り込むとなると余計に難しくて。いかに美しいデザインに仕上げるか。難しいからこそパターンを引いてて楽しかったです」」
パターンが複雑になればなるほど縫製も大変。SC111の縫製については、固定のスタッフ2名を含む5名1チームが週替わりで結成され、まずはポケットの縫製から取り掛かります。「薄手の綾織の生地を使っているため、手で押さえていないと生地がよれてしまうんです」と工場長の仲井さんが話す傍ら、平然とミシンを踏む吉田さん。縫製場の守護神です。
「基本的に一般的なパンツと縫製の仕方は同じ。特に難しいことをしているわけではないですよ」と謙遜されますが、仕様書にはメモ書きがびっしり。「ややこしい作りだぞ、というのがこのパンツの第一印象でした。仕上がってから、あれ!?一個パーツが足らん!なんてこともあります(笑)」と吉田さん。
縫製には何種類ものミシンを使い分けます。一本針用、二本針用、巻き縫い用。吉田さんは、まるでピアノを弾くかのように、どのミシンも使いこなします。縫いやすくするため、生地にアイロンをかけたりハンマーで叩いて平らにしたりするのも、傷や痕になってしまう可能性があるため必要最低限に抑えます。その上“ダダダダダダ”と猛スピードで気持ち良くミシンを走らせても縫い代は常に均一。圧巻の集中力と職人技でSC111をまるっと一本仕上げます。
「どれだけ急いでいても、感覚や目分量ではなく、物差しを当てて長さを測るようにしています。仕上がりの美しさが全く違うんですよね。街でSCOを穿いている人を見かけると直ぐにわかるし、うれしい気持ちになります」
パーツや補強は、縫製と縫製の合間に、特殊ミシン(用途・目的に応じて作られたミシン)で加えていきます。縫製ミシンと比べるとセッティングが難しく、なかにはデジタル上で糸のテンションや縫い調子を整えてから扱う機種も。糸の太さや種類によって都度データの入力を変更せねばならず、専門の知識と長年の経験が求められます。
ポケットやベルトループの端を止め縫いする“カンヌキ”とスナップボタンの取り付けを担当するのは大島さん。特殊ミシンを愛でながら、今年でキャリア13年目を迎えます。
「特殊ミシンの扱いならお任せあれ、なんですが……SC111はカンヌキを施す場所が77ヶ所もあって、毎度ミシンの前で気合を入れ直します。1セットは25個分しか入力できず、長さや圧力がそれぞれ異なるため、止め縫いをする順番を間違えると訳わからなくなってしまいます。普通の5ポケットジーンズなら17ヶ所くらいなんですよ」。
ハットがお似合いの難波さんは、特殊ミシンマスター。ボタン付けやボタンホールの穴あけを担当しています。「ボタンホールは、先に周りを縫ってから穴を空けています。ヴィンテージ品によく見られる“後メス”と呼ばれる製法で、穴を開けたところがほつれていき、ボタンホールの経年変化を楽しめます。長いことここで働いていますが、難易度もこだわりもこのパンツはAランク!」。
SC111のベースとなったのは、辰口さんが学生時代から穿き込んだ軍用パンツ。若かりし頃の辰口さんは“ただの古着”と思い込み、その軍パンを仕事着にしていましたが、ジョンブルの先輩が「すごいの穿いてんじゃん!」と価値を教えてくれたという、思い出の一本です。どのディテールも語りどころ満載ですが、特にこだわってヴィンテージの雰囲気を表現したのがサイドポケットの膨らみとボタン付けです。
とにかく縫いにくいポケット
M-51カーゴパンツの特徴でもある、ボリューミィなカーゴポケット。モデルを象徴するディテールがゆえに、辰口さんのこだわりもひとしお。「穿き潰してポケットにたくさん物を入れてちょっと伸びちゃったみたいな雰囲気」を出すために、絶妙なふっくら感が表現されています。
そのために、ポケットの生地は型紙よりも少し大きめにカットし、縫製のときに生地をふんわりさせながらボディに縫い合わせていきます。ポケットのタックの向きもランダムに入れられており、アイロンをかけてから縫製へ。
こちらはカーゴポケットの角っこのステッチ。よく見ると、三角形が2つ確認できます。これは2本針ミシンで仕上げている証で、ヴィンテージで見られるディテールです。
さらに、サイドポケットのフラップにも一工夫が。一般的にフラップは接着芯で生地を貼り合わせて強度を高めるのですが、本作の場合は生地と生地の間に“スレキ”と呼ばれる芯材を挟んで、フラップがのっぺりしないようにされています。極め付けに、ステッチはカクカクしないよう小丸縫いでフィニッシュ。これが非常に難しく、感覚に頼って縫うため最高レベルの縫いにくさ!
絶対に外れない!?唯一無二のボタン付け
SC111は通常の2倍の量の糸を使ってボタンが縫い付けられています。かなり丈夫で、穿き込んでも解れにくいです。上糸と下糸の糸の太さを変え、裏糸を表糸より細くして生地への負担も軽減しています。洗濯を繰り返すと糸がふんわりとボリュームを増し経年変化も楽しめます。
使用したボタンは、ココナッツでできたナットボタン。全て色味が異なり唯一無二の特別感を宿します。縫い付け方はボタンの表面に糸の×のできる“クロス付け”で、ボタン付け専用の特殊ミシンを駆使して行います。
ウエストの内側に配された小さいポケットのボタンは、サイズが小さく糸を通す穴と穴の距離も狭いため、針がボタンに当たり折れて怪我をしてしまう危険性も。どれもこれも全てはヴィンテージを忠実に再現するため。外からは見えない内側のディテールにまで辰口さんのこだわりは及びます。
ビギンファンディングで限定販売をするのは、これまで魅力を語ってきたSC111を含めて4作あります。ブランドは今回で3シーズン目を迎え、“春夏に相応しい白パン”をテーマに、モデルに合わせて生地を変更しています。
サイズ展開は26〜34まで2インチ刻み。ユニセックスなのでパートナーとペアで、またはシェア使いも◎。
シリーズの中で最も売れ行きのいい「SC111」には、まだまだ語りどころがたくさん。止血用に備え付けられたドローコードやウエスト内側のコインポケットなど、M-51のディテールは取りこぼしなし。一方で、フロントファスナーには綿素材のテープを採用。本体に使用した米綿混のブレンド糸とやや太番手のムラ糸で織ったバックサテンと一緒に、自然な経年変化を楽しめます。
「SC111」と同じバックサテンで、ヴィンテージ業界でも特に希少性が高いとされるモデル、フランス軍のM-47も再構築。どっしりとしたシルエットを尊重しつつ、ワタリから直線的にテーパードさせてスッキリ穿けるようにモデファイされています。その他、機能性を考慮した不揃いなベルトループや大きめのマチ付きのカーゴポケットなど、当時のディテールはそっくりそのまま。
40年代に穿かれていた、米国軍のネイビーパンツをムラ糸の生成りデニムで復刻。キレイに落ちるシルエットを生かしつつ、細い腰回りにゆとりを持たせるため、ダーツを入れるなどしてバランスを整えています。さらに、ポケットの位置もオリジナルと比べて上方に配置し利便性をアップ。サイドに縫い目のない上品見えする一本で、ジャケットスタイルにも好相性です。
春夏コーデの王道、ペインターパンツ。アメリカのヴィンテージデニムを元に作られた、ライトオンスのホワイトデニムで爽やかに仕上げながら、糸の打ち込みを限界まで強めて、ふっくらとした立体感を演出しています。また、1本針ミシンを2度掛けしたダブルステッチもポイント。あえてステッチワークを均一にしないことで、ワークウェアの粗っぽさを表現しています。
ビギンファンディングだけのスペシャルトートを
購入者全員にプレゼント!
最後に
近年、ヴィンテージ古着の価格高騰が著しく、運命の一着に出会える機会が減っています。望んだ年代のモデルを探すだけでも骨が折れますが、着用することを想定し、自分の体にフィットするものとなればなおさらかと。
本格的な作りで、なおかつ今にハマるかっこいいカーゴパンツだったら……それってもう古着以上の価値と言っても過言ではありません。古さだけが価値基準ではなくなった大人には、最良の選択ではないでしょうか。
写真/伏見 早織 文/妹尾 龍都
ソーイング チョップ オールズ
Sewing:縫製 Chop:意匠・品質 O’alls:作業着・衣服
1990年代に日本で起こったヴィンテージブーム。岡山県児島を聖地とするデニムが流行し、JOHNBULLは【Sewing Chop O'alls/ソーイングチョップオールズ】をスタート。しかし、ブームの衰退、トレンドの変遷と共に同ブランドも縮小、休止。ヴィンテージアイテムの知識や技術も次第に廃れていきました。あらためて"今"JOHNBULLが提案するこれからのNEO VINTAGE。本物が持つ素材・ディテール・縫製・仕様が醸し出す佇まいに注目したシリーズとして、【Sewing Chop O'alls/ソーイングチョップオールズ】をリスタート。効率を重視される現代の価値観からは非常識と取られる手法を肯定し、一からのモノ作りの復活を目指します。「確かな知識、技術で創造されたワードローブ」をリリースするブランドです。
■ サイズスペック
SC111 FIELD SHELL TROUSERS
サイズ | 股上 | 股下 | ウエスト | すそ周り | もも周り | ヒップ |
---|---|---|---|---|---|---|
26 | 30.5 | 68 | 72 | 23.4 | 35 | 105 |
28 | 31 | 68 | 77 | 24.2 | 36.3 | 110 |
30 | 31.5 | 70 | 82 | 25 | 37.5 | 115 |
32 | 32 | 72 | 87 | 25.8 | 38.8 | 120 |
34 | 32.5 | 72 | 92 | 26.6 | 40 | 125 |
SC112 FRENCH ARMY FIELD TROUSERS
サイズ | 股上 | 股下 | ウエスト | すそ周り | もも周り | ヒップ |
---|---|---|---|---|---|---|
26 | 34 | 65 | 72 | 24.4 | 36 | 104 |
28 | 34.5 | 65 | 77 | 25.2 | 37.3 | 109 |
30 | 35 | 67 | 82 | 26 | 38.5 | 114 |
32 | 35.5 | 69 | 87 | 26.8 | 39.8 | 119 |
34 | 36 | 69 | 92 | 27.6 | 41 | 124 |
SC108 US NAVY DENIM TROUSERS
サイズ | 股上 | 股下 | ウエスト | すそ周り | もも周り | ヒップ |
---|---|---|---|---|---|---|
26 | 32 | 68 | 72 | 21.4 | 33.5 | 100 |
28 | 32.5 | 68 | 77 | 22.2 | 34.8 | 105 |
30 | 33 | 70 | 82 | 23 | 36 | 110 |
32 | 33.5 | 72 | 87 | 23.8 | 37.3 | 115 |
34 | 34 | 72 | 92 | 24.6 | 38.5 | 120 |
SC109 CARPENTER JEANS
サイズ | 股上 | 股下 | ウエスト | すそ周り | もも周り | ヒップ |
---|---|---|---|---|---|---|
26 | 32 | 69 | 72 | 21.9 | 34 | 99 |
28 | 32.5 | 69 | 77 | 22.7 | 35.3 | 104 |
30 | 33 | 71 | 82 | 23.5 | 36.5 | 109 |
32 | 33.5 | 73 | 87 | 24.3 | 37.8 | 114 |
34 | 34 | 73 | 92 | 25.1 | 39 | 119 |
編集後記
岡山県のお隣、広島出身の私ですが、児島が“デニムの街”と知ったのは大人になってから。これまで幾度となく取材で訪れましたが、電車移動は今回が初めて。JR児島駅構内は、壁や階段、自動販売機、コインロッカー、改札までデニム、デニム、デニム! この風景が特別だなんて、地元の子どもたちはこの街を離れた時に気づくのかな……。(バイヤー・ウラヤマ)
購入にあたって
このプロジェクトは、目標金額の達成に関わらず、プロジェクト終了日の2023年3月31日までに支払いを完了した時点で、商品の購入が成立します。商品のお届けは2023年5月中旬頃の予定です。
SC111 FIELD SHELL TROUSERS (バックサテン生地)
30,800 円(税込)
※ 商品のお届けは2023年5月中旬の予定です。
SC112 FRENCH ARMY FIELD TROUSERS (バックサテン生地)
30,800 円(税込)
※ 商品のお届けは2023年5月中旬の予定です。
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