職人とユーザーを繋ぐ、ビギンの新しいコミュニケーションスペース
造船所で使っていた古材をスツールに
造船職人の命を守る足場板を家具に再生する「瀬戸内造船家具」。愛媛県今治市の造船会社「浅川造船」、伊予市の真聖建設が運営するセレクトショップ「ConTenna(コンテナ)」、そして企画・運営を行う「オズマピーアール」の3社で発足したプロジェクトです。今回は「瀬戸内造船家具」初となるコラボレーションがビギンで実現。塗料や焦げの跡をそのまま活かした座面に、黒皮鉄の脚を組み合わせたスツールを共同開発しました。温かみのある音が拡がるスピーカー機能も携えている、“再生”をテーマにした一脚です。送料は価格込み。売上の10%は愛媛県の子どもへ還元する目的で積み立てられます。
造船職人の命を守る足場板を家具に再生する「瀬戸内造船家具」。愛媛県今治市の造船会社「浅川造船」、伊予市の真聖建設が運営するセレクトショップ「ConTenna(コンテナ)」、そして企画・運営を行う「オズマピーアール」の3社で発足したプロジェクトです。今回は「瀬戸内造船家具」初となるコラボレーションがビギンで実現。塗料や焦げの跡をそのまま活かした座面に、黒皮鉄の脚を組み合わせたスツールを共同開発しました。温かみのある音が拡がるスピーカー機能も携えている、“再生”をテーマにした一脚です。送料は価格込み。売上の10%は愛媛県の子どもへ還元する目的で積み立てられます。
本来の役目を終えて、別の価値あるものに再生させる。愛媛県で発足した「瀬戸内造船家具」は、足場板の再生プロジェクトでありブランドです。足場板とは、船の建造時に使用される全長3メートル厚さ5センチのサイズ感をした杉材のこと。「瀬戸内造船家具」では、その大きさと表面に残る塗装や溶接の痕跡を活かした大型家具を製作しています。
“今治タオル”で有名な愛媛県今治市は造船業も盛んで、日本全土の30%を超える船舶を建造しています。この街で創業76年の浅川造船は、地場産業を引っ張る造船会社の一社。石油精製品などを運ぶケミカルタンカーの製造量が世界3位で、それを主力として世界有数の建造数を誇っています。
そんな浅川造船が抱えていた問題が、役目を終えた足場板の使い道。大型船を造るには一隻で約1万本の足場板が必要で、それらは数年周期で取り替えられます。しかし、その大半は焼却処分されており、造船業界全体で長年の課題となっています。
国の定める環境規制のルールは守って当たり前。“海”を商いのフィールドとする造船会社として、もっと地球にやさしい取り組みができないか。浅川造船では古い足場板を捨てずに、有効活用する方法を模索していました。
そこで立ち上がったのが「瀬戸内造船家具」。コロナ禍にスタートしたばかりですが、重厚感と足場板だったという歴史が刻まれた家具類は、その魅力から徐々に認知が広がり、地元だけでなく、全国各地から問い合わせがあります。
ラインナップのなかでは、ダイニングテーブルやシェルフが人気です。リビングのインテリア一式を「瀬戸内造船家具」で揃えたり、事務所のデスクとして購入されたり。売上の10%は、愛媛県の子どもたちの未来への支援のために積み立てられています。
足場板を使った家具の存在感に驚きました
「足場板を有効活用したい!」という浅川造船の昔年の思いを昇華させるべく、立ち上がったのは東京のPR会社、オズマピーアール。一ノ瀬さんは古くから付き合いのあった浅川造船の村上さんから、足場板を家具にするアイデアを持ちかけられ、足場板再生プロジェクトを企画します。
「相談を受けて村上さんのご自宅に伺うと、足場板を天板に使用したテーブルがあって。その存在感に圧倒されてしまい、この古材を有効活用して家具ブランドを立ち上げたいと思いました。でも、船を造るのと家具を作るのでは使う技術が違っていて……。浅川造船では製作はできないとのことだったんです。」。
そこで白羽の矢が立ったのが、愛媛県伊予市で工務店、真聖建設の代表を務める吉野さん。地域の土木事業を引き受けながら、住宅の建築やインテリア系セレクトショップのConTennaを運営する、この業界25年のマルチプレーヤーです。
「ただ単に家具を作るのであれば、僕よりも適任がいると思います。でも、地元の造船業の力になれたらという気持ちがあって。古材感を残すという、ブランドのコンセプトにも共感しました」
「できると思ったら、なんでもやってみる」と続ける吉野さん。2018年の秋にオープンしたConTennaも、自らの手でリノベーションしたお店。増設された2階の床材にも足場板が使用されています。
かくして、浅川造船、オズマピーアール、ConTennaの3社が共同し、発足した地元産業発のアップサイクルブランド「瀬戸内造船家具」。これまでは足場板の大きさを活かした大型家具をラインナップしていましたが、「手軽に取り入れられるものを」というプロジェクト・メンバーの思いから、ビギンとのコラボレーションでスツールが誕生しました。
出来上がったのは、ConTenna、オズマPR、そしてビギンの3社でアイディアを出し合い、ウッドスピーカーの機能を追加したスツール。電子スピーカーのような音響装置とはいきませんが、座面に開けた溝にスマホを差し込んで音楽を鳴らせば、音が優しく広がります。デスクや枕元など耳元の近くに置いて温かみのある音を楽しむというイメージです。
写真のiPhone14 proをスタンドに差し込んだ場合はケースあり、なしどちらでも不自由なく使えます。スマホの差し込み口には半円の穴も空けて、スマホを差し込んだまま操作できる仕様にしました。ですが、スマホの機種やケースの厚みによっては対応しない場合もあるので、悪しからず。(後半に記載したサイズをご確認下さい)
足場板は座面に使用。造船の街・今治で、造船職人が船造りに魂を燃やした歴史を、座面に残るペンキの跡やコテの焦げ目から感じられます。座面には石油や合成顔料を含まないオイルを浸透させ、品よくツヤ出ししています。
レッグの素材には、青光りする黒皮鉄を採用しています。鉄を1000度ほどの高温で整形した際、温度が下がるときに鉄が酸化してできる被膜を“黒皮”といい、着色塗装した黒では表現できない鉄本来の色ムラが残り、素材を立体的に見せます。
古材を使用したスツールですが、座面はていねいな仕上げが施されているため、木材が手に刺さることはなく、レッグの先はゴムを貼り付けているのでフローリングが傷つきにくくしています。
では、こちらの音楽と足場板を“再生”する一脚は、いかにして作られているのか。制作過程をご紹介します。
素材の味を活かすために、
“やりすぎない”を心がけました
吉野さんがこだわったのは、足場板ならではの趣を残すこと。削りすぎない、薄くしすぎない、加工しすぎない。使う前からヴィンテージさながらの重厚感を漂わせるのは、“やりすぎないモノづくり”の賜物です。
「足場板は、ただの板じゃないでしょ?素材としては現役でありながら、船造りで活躍してきた歴史も残る。キレイに作ろうと思えばいくらでもキレイにできるけど、せっかく足場板でスツールを作るんだから味を活かさなきゃ」と吉野さん。
スツールの製作にうつる前に、まず足場板を自動かんな機にかけて下拵え。薄くならないように注意しながら表面を削り、滑らかにしていきます。
座面の直径は34センチ。腰掛けるのにちょうどいいサイズ感に設定しました。足場板1本では奥行きが足りないので、2本を横並びで接着しベースを作ります。通常は木材の表面と裏面を揃えますが、今作の場合はより味わい深い方の面を、座面の上にくるように結合します。
結合するときは、双方の側面にジョイントカッターで穴を開け、一方にブナの圧縮剤のチップを差し込んで、もう一方にボンドを流し込みます。“ビスケットジョイント”という接着方法で、組み木と同じ要領で足場板が強力にくっつきます。
四角の板は、一晩寝かせて、乾燥した状態でクロスカットソーという電動の丸鋸を使い丸くカット。出来上がった円盤は電動ペーパーで滑らかになるまでヤスリをかけます。形が整ったら、今度はスピーカーのディテールを施す工程へ。
座面にはスマホを差し込む長方形の穴が空いています。そして、側面には音を拡げるためのメガホンの形状を模した穴が2つ。このディテールは、ルーターという電動工具と電動ドリルを使って施します。
無骨でプリミティブな足場板の雰囲気を壊さぬよう、座面に音を反響させる構造を何か特別な機材を埋め込むことなく、シンプルにデザインすることが製作のマスト条件。吉野さんにお願いし、穴の深さやサイズを1ミリ単位で何度も調整しました。
今回のコラボでは、本作の他に、幻のスツールが2型あります。それが上の写真のアイテムで、猫が爪研ぎできるレッグにロープを巻きつけたモデル(写真中央)と昔懐かしい図工室にありそうなモデル(写真右)です。
ビギンとオズマピーアールとConTennaでアイデアを持ち寄り、商品化をする前にビギンマーケットのインスタグラムでライブを配信! インテリア用品ということで、ビギンの妹誌『ララビギン』のアカウントと同時配信で、読者の皆さんにご意見を伺いました。
今回のコラボレーションをプロデュースしているオズマピーアールの南部さん(写真右)もインスタライブに出演。インスタライブで寄せられたご意見や感想をもとに、取材日、吉野さんに試作していただいた3種のスツールをプロジェクトメンバーとビギンであれこれ意見を出し合いつつ、スピーカー機能付きの一脚に決定しました。
「やはり、決め手は足場板の座面と黒皮鉄のレッグの組み合わせが生み出す、シャビーシックな雰囲気。和室にも洋室にもなじみそうですし、実はワイヤレススピーカーというギミックもユニークで面白いですよね。でも……このモデルに絞るのは無茶苦茶悩みました。図工室に置いてあるようなデザインのモデルは、横にすれば机として使えるし、横に寝かせた状態で座ると私にとってはすごくいい高さで(笑)」と南部さん。
吉野さんの右腕として今回の企画をサポートしている山下さん(写真左)は、「レッグにロープを巻いたモデルは、インテリアの一部として存在感が抜群で、猫を飼っていない場所においてもよさそうでした。将来的に商品化もあり!?なんて、話しもしています」
苦渋の決断の末、選ばれしスピーカー機能付きスツール。試作段階ではレッグが4本でしたが、完成品ではレッグを3本にして軽量化を図りました。
どっしりとした重さがあり、安定性が高いので、座るのはもちろん踏み台としても活躍します。そのほか、ソファーの隣でサイドテーブルのように使ってもいいですし、座面の上に観葉植物をおいてディスプレイしてもよさそうです。音楽を部屋に鳴らせば空間に温かみと深みをプラスしてくれます。
「瀬戸内造船家具」の家具は、オフィシャルWEBサイト及びコンテナでサンプルを確認できるほか、愛媛県松山市のカフェバー&ショールーミングストア「道後一会(どうごいちえ)」でも、一部予約を受け付けています。
「道後一会」のように、これから瀬戸内造船家具はプロジェクトに賛同してくれる仲間を増やしていく予定。オズマピーアールの一ノ瀬さんは「地元のデザイナーとコラボレーションするのもおもしろうそう」とプロジェクトの将来を見据えます。所在をなくした古い足場板の再生ストーリーは、まだ始まったばかりです。
最後に
造船職人の命を支えてきた古い足場板。大海原のどこかへ旅に出ているかもしれない大型船の姿に思いを馳せると、スツールからは唯一無二の安心感を得られます。
そして、人や地域のためを思って始まった瀬戸内造船家具だからこそ、スツールには温もりが宿る。ビギンのコラボレーションにより、好きな音楽も空間に広げられるように。一生の付き合いを約束したくなる、自宅に迎え入れるにふさわしい一脚に仕上がりました。
写真/武蔵 俊介 文/妹尾 龍都
編集後記
記事でも触れましたが、今年1月にプロジェクトメンバーでインスタライブを実施しました。ConTennaの吉野さんはわざわざ愛媛から上京して頂き、ほぼぶっつけ本番で配信開始。にもかかわらず現場の結束力、温度感は、足場板よりもアツかった~!インスタライブはビギンマーケット(@begin_market)、ララビギン(@lalabegin_official)のアカウントに残っているのでぜひご視聴下さいネ!(バイヤー・ウラヤマ)
購入にあたって
このプロジェクトは、目標金額の達成に関わらず、プロジェクト終了日の2023年4月30日までに支払いを完了した時点で、商品の購入が成立します。商品のお届けは2023年5月下旬頃の予定です。
応援募集中(販売中)の企画はこちら。未来のヒット商品になる!?プロジェクトをお見逃しなく!
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