職人とユーザーを繋ぐ、ビギンの新しいコミュニケーションスペース
バブアーが “藍”した
ヘルメットバッグ
本誌『ビギン』でも幾度となく紹介してきた、英国アウターの名門「バブアー」。ヴィンテージブームが再来している今、同ブランドの古着も希少性が高まり、価格も高騰しています。一方で、ダメージが酷く、廃棄されるものが多いのも事実。今年始動したばかりのブランディングチーム「ゴルディロックス」は、そうしたバブアーのオイルドジャケットをヘルメットバッグにアップサイクル。ビギンファンディングをきっかけに、香川の藍染工房「キマイラ」とタッグを組んで、2種類の藍染めヘルメットバッグを製作しました。
本誌『ビギン』でも幾度となく紹介してきた、英国アウターの名門「バブアー」。ヴィンテージブームが再来している今、同ブランドの古着も希少性が高まり、価格も高騰しています。一方で、ダメージが酷く、廃棄されるものが多いのも事実。今年始動したばかりのブランディングチーム「ゴルディロックス」は、そうしたバブアーのオイルドジャケットをヘルメットバッグにアップサイクル。ビギンファンディングをきっかけに、香川の藍染工房「キマイラ」とタッグを組んで、2種類の藍染めヘルメットバッグを製作しました。
今回の企画でこだわったのは、バブアーらしさを残すこと。生地を無駄なく使うだけでなく、ヘルメットバッグには細かいパーツもそのまま採用しています。染めを担当するのは、香川の藍染工房「キマイラ」。完成した2種類のカラーバリエーションは、染め方を変え、元の生地色を活かした藍色を表現しています。
日本の染色文化を代表する藍染。抗菌やUVカット効果、最近では新型コロナウイルスを不活化させる研究結果も発表されました。機能面だけでなく、ファッション面においても重宝されてきた歴史があり、着古した洋服に新しい命を宿す手段として親しまれてきました。
原料“蒅(すくも)”の産地である徳島県が有名ですが、香川県の北東部に位置する津田町にも一軒、本場の流派を継ぐ藍染工房があります。名前は「キマイラ」といい、約3年前、瀬戸内海に面した海岸沿いにオープンしました。
1階にオリジナル商品を展開しているほか、2階にはギャラリー兼クリエイティブスペースも。近所の若者たちが集まり、そこで地元を盛り上げるためのミーティングや音楽活動などを行なっています。過疎化が進む地域ですが、「キマイラ」を中心に新しいカルチャーの芽が育ち始めていて、来年には観光客を呼び込む仕掛けを続々と計画しているんだそうです。
“和”を超えた、
ファッション的な藍染も
あっていい
ヘルメットバッグの染めを担当したのは、「キマイラ」代表の堀尾早敏さん。都内の古着屋で見かけた藍染めのシャツに魅了され、未経験ながら染めの世界に足を踏み入れました。本場、徳島県上坂町の工房「技の館」で3年間修業を積み、独自のスタイルを確立されます。
「藍染め=“和”のイメージがあると思うんです。ただ、せっかくの美しい染色文化なので、もっとファッションとして世の中に浸透させたくて。まさに今回のコラボはうってつけ。英国には“ロイヤルブルー”があるように、“ジャパンブルー”も、トラッドなバブアーにうまくマッチするはずです」
もともと海老の加工場だった場所を再利用して、工房には藍甕を4つ配置。藍液は“天然灰汁発酵建て”といわれる製法で、主に4つの素材からできています(上の写真二枚目を参照)。キマイラでは一年周期で藍液を入れ替え。古くなればなるほど染める力が弱くなる性質を利用して、鮮度の異なる3種類の藍液を常備しています。
藍液を長持ちさせるためには、発酵を促進しなければなりません。染まり度合いをノートに記録したり、藍の華(藍液の表面にできる泡ぶく)の量や匂いを確認したり。徹底した品質管理を毎日続け、藍液の中の微生物を育てます。職人の技術と知識、そして感覚が必要な作業です。
「できるなら染めたくない。普通なら断るかも(笑)」と堀尾さんが言う理由は、オイルを含んだバブアーのジャケットだと染料が浸透しづらいから。ヘルメットバッグはオイルが抜かれた状態で工房に届きますが、染める前にお湯に浸けて、できる限り不純物を取り除きます。おまけに、ヘルメットバッグはパーツが多いため、ただ藍液に浸けるだけでは細かい部分まで完全に染まりません。手で塗り込むようにしなければならず、とにかく手間暇がかかります。
浸けて、絞って、乾かす。染める手順は、これが1セット。一般的な綿のTシャツだと5〜8回で染まりますが、浸けておく時間を長くすれば濃く染まるわけではないので、ヘルメットバッグは10〜12回繰り返します。染め終わったら、最後は瀬戸内海の潮風に当てながら天日干し。染めた生地から灰汁が出なくなるまで水で洗い、色の純度を高めます。
どの工程でも、その日の気温や湿度によって仕上がりが変わります。細かな微調整が必須で、それを怠るとキレイに染まりません。堀尾さんの丁寧な仕事があってこそ、バブアー古着を使った藍染ヘルメットバッグは完成されます。
堀尾さんは、藍染めアーティストとしての一面もあります。第76回 現展で入選、第27回 放美展で美術工芸優秀賞を受賞。その技術とセンスが評価され、なんと東京五輪2020のフェンシング日本代表選手のグローブを染色した経験も。独立して3年目と業界の中では若手ですが、洗っても落ちない藍色に染まった手が、その努力を物語ります。
「藍の手を見て驚かれることもしばしばあるので、まずは地元から! オリジナル商品にも力を入れていく予定ですし、今後も藍染めと向き合って魅力を広げていきたいです」
ヘルメットバッグ本体は日本のアップサイクルメーカー「ゴルディロックスゾーン」のオリジナル商品です。代表の佐野さんは、およそ35年間にわたり大手アパレルメーカーで販売や仕入れを担当。現在はスーツブランドのデザインアドバイザーとしても手腕を奮っています。
本企画の発起人であり、キマイラとゴルディロックスゾーンのコラボをプロデュースしたのが上田勝仁さん(写真左)。上田さんもまた、東京や関西で長年アパレル業界に携わり、2022年の春、海のある香川に移住。職人とユーザーの架け橋を担う「Alterna(オルタナ)」というチームを結成し、ソーシャルビジネス事業を展開。地域づくり事業にも積極的に参加しています。ゴルディックスゾーンのアップサイクルの取り組みに共感して、地元・香川の藍染に着目したところから企画がスタートしました。
ベースとなるヘルメットバッグのデザインは、1970年代に誕生した3rdモデル。フロントの2ポケットや袋状になったメインルームなど当時のディテールを再現しています。
素材は、バブアーの定番モデル、ビデイルを中心とした古着を解体したもの。山形県にある縫製工場で一点一点すべてハンドメイドされ、製品として使えない部分以外は余すところなく再利用し、裏地やファスナー、衿元など、パーツも使われています。古着なので多少のダメージは残りますが、それこそが一点モノの証。補強やリペアはしっかり施し、それによるパッチワークの縫い目が味となってデザイン性を高めています。
ヘルメットバッグは2色を展開。セージグリーン×カーキのジャケット生地を使ったこちらは、中濃度と高濃度の藍液で染めるライトピュアインディゴ。濃く染まりすぎないよう調整されているため、元の生地のセージグリーンとカーキが暗緑色に。使い続けることで色ムラや風合いの変化も、藍染ならでは。自分だけの藍色を育てて下さい。
こちらはネイビー×ブラックのジャケット生地を染めたパターン。一番濃度の高い藍液で何度も染めたダークトーンに。ジャケットスタイルにも合わせられる深く複雑な藍色を表現。バブアーのように丈夫な生地を天然の藍液で濃く染めるのは至難の業。膨大な時間と労力が掛かるため、自ずと価格も跳ね上がりますが、天然藍100%でこの価格は今回限り!?
バブアーの生まれた国、イギリスの直営工場では修復部隊が結成されています。そこには直筆の手紙付きでダメージを負って着られなくなったアイテムが多数届きます。例えば“愛犬がオイルドジャケットのにおいの虜になり噛みちぎってしまいました”というように……。熟練の技を持つ職人たちが、再び着られるように蘇らせています。
充実したリペアサービスがあるからか、イギリスではジャケットを代々受け継ぐ家庭も少なくありません。“次の人へバブアーを繋いでいく”という意味で、藍染のヘルメットバッグは本国のカルチャーにも共鳴します。
“ジャパンブルー”と評されるほど、日本の藍染の技術は世界から評価されています。今回のビギンファンディングでは、その本場で修業を積み、独自のセンスで新しい藍染の魅せ方に挑戦する藍染師と、バブアーの古着をヘルメットバッグにアップサイクルするメーカーのコラボレーションが実現。作り手の愛と天然染料の藍が幾重にも重なった、まさにアイの結晶とよべるバッグが完成しました。世界にひとつだけのバブアーを“藍”したバッグが、自分だけの相棒に育っていく過程をぜひお楽しみください。
キマイラについて
2020年の夏に開業。OEM事業を軸に、オリジナル製品の販売も行う。2階のギャラリースペースでは、堀尾さんのアーカイブ作品を展示。
〒769-2401 香川県さぬき市津田町津田1391
Instagram:@Khimaira34
ゴルディロックスゾーンについて
2022年に立ち上がったばかりの日本のアップサイクルメーカー。アパレル領域を中心に、アップサイクル事業を進める。2023年秋冬シーズンより、オリジナルアイテムの卸もスタート。
Instagram:@ryo_sano_
オルタナについて
香川県を拠点にした衣類廃棄問題にアプローチするソーシャルビジネス事業を展開。今回のコラボレーションの発起人、代表の上田勝仁さんは、アパレルと日本の伝統技術の架け橋として、アップサイクル商品を中心に企画開発。廃棄予定の衣類回収を行い、今後はアップサイクルのブランドの立ち上げや、地域型循環を掲げたセレクトショップのサポートを行う予定。
https://alterna.fashionstore.jp
Instagram:@alterna_upcycle_official
編集後記
藍染師・堀尾さんと名刺交換をしたとき、藍に染まった手先が印象的でした。「コンビニや飲食店に行くと、ギョッと驚かれます」と、堀尾さん。ただ、地元の讃岐うどん店「羽立」の店員さんは、堀尾さんの手を見るなり「いつものね」と、温玉ぶっかけうどんを作る姿もまた印象的なのでした。(バイヤー・ウラヤマ)
購入にあたって
このプロジェクトは、目標金額の達成に関わらず、プロジェクト終了日の2022年12月31日までに支払いを完了した時点で、商品の購入が成立します。商品のお届けは2023年2月下旬頃の予定です。
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