第二夜 堀切 きよし
酒が私を呼んでいる。血液の成分はほぼお酒。酒の魔女「魔女っこれい」と申します。
今夜は“アレ”が飲みたい気分だ。“アレ”を求めて向かうは葛飾区の鉄道駅で最も西に位置する、堀切菖蒲園駅。
“アレ”の歴史は古く、今から向かう居酒屋では1964年の東京オリンピックが開催された年から常連客に親しまれ、職人や製造工の喉と心を潤したといいます。その神秘的な色とひと切れのレモン。焼酎の香りが泡になってパチパチと鼻をくすぐる。ほんのりと甘酸っぱい余韻を楽しむ。“アレ”はなんとも気分のよくなる飲み物なんですよ。
店に着く前からすでにフワフワした気持ちになっていますが、気を引き締めて車がビュンビュン通る大きな通りを渡り、細い路地に入ると見えてきました、今夜のお目当ての店「きよし」さんです。
日曜は15時に開店、それ以外の曜日は17時から。21時半に外の立て看板の灯りを消して22時には暖簾を片付け、あとはお客さんに合わせるそう。店のお母さんに聞いたら、「仕事が遅くに終わるお客さんも多いから、ないものはないけどあるものなら出すよ、っ言ってるのよ」と、下町居酒屋の懐の深さを感じます。
店内を覆うように大きな大理石調の黒いカウンターテーブル。それを囲う黒い板が壁に垂れ下がって、白いチョークで定番のメニューが書かれています。席に座ると、お品書きがびっしりと書かれたホワイトボードを持って来てもらえます。
現在のこの場所は、2010年に移転した後の店で以前は近くのガード下で居酒屋をやっていたそうです。その前はガード下で乾物屋を営んでいたとのこと。
【ミスらん酒】 ボール
“アレ”です。氷はなし。梅のシロップで色と風味を付けた焼酎を炭酸水で割る、まるでウイスキーハイボールのような飲み物。そう、“アレ”の正体は焼酎で作ったハイボール。通称“ボール”です。お店には他の飲み物もありますが今夜はこれ一択でやらせていただこうと思います!
【ミスらん肴】 煮こごり
ついつい毎回、頼んでしまう私の中で絶対に外せない定番のメニュー。冬は急がなくていいですが、夏はお早めに食べないと室温で溶けてしまう煮こごり。こちらを舌の上でゆっくりと溶かしながら飲むボールは、より一層美味しいんです!
【ミスらん肴】 もつ煮込み
煮込みはお母さんの気まぐれで仕込むので、出会えたあなたはラッキー。この日は、味噌ベース。「きよし」さんの味噌ベースもつ煮込みはモツとこんにゃくとにんにく、生姜しか使わないとてもシンプルな一品。柔らかいモツととろみのあるにんにくの効いたスープが癖になります。塩ベースの時は、刻み玉葱を入れて煮込むんだとか。
【ミスらん肴】 砂肝からあげ
大きくて肉厚の鶏の砂肝に、花弁が開いたかのように包丁で切れ込みが入っています。衣は竜田揚げのような感じでさっくりしています。
【ミスらん酒】 ボール(テイク4)
瓶の数でお会計するので、空の炭酸は下げずに目の前に並べておくんです。誰が言い出したのか、この瓶をボウリングのピンに見立てて「ワンストライク10本、プロボーラー20本、普通7本で10本目からが勝負」なんて言われているらしいです(⚠️これはお酒です)。無理せず行きましょう。お母さんが言うには、初心者は4本までとのこと。私は、5本で打ち止めです。
「きよし」さんの元気なお母さんと、たまに店にいらっしゃって常連さんと仲睦まじくやり取りを交わすお子さんの姿は新参者の私でも目頭が熱くなりますから、幼い頃から成長を見守ってきた常連さんたちの喜びは想像にかたくありません。
店のお母さんが「大ママ」と呼ぶ、きよしの女将さんは義理のお母様だそうで、会話を聞いているだけで、まるで実家に帰って来たような安心感に包まれます。
いい酒、ご馳走様でした。
お腹も心も満たされたところで、次回はちょっと身構えてしまうような居酒屋さんに行きたいと思います。酒と緊張感を味わいに。
本日のお会計
2290円
- ボール250円×5
- 煮こごり380円
- もつ煮込み380円
- 砂肝からあげ280円
- 【下町★渋グルマン度】
- プロボーラーになりたい度
- 常連さんになりたい度
- 堀切菖蒲園に住みたい度
- きよし
-
住所:
東京都葛飾区堀切 5-23-6 -
営業時間:
17:00~23:00(月~水・金・土)、15:00~23:00(日) -
定休日:
木曜日 -
TEL:
03-3690-9947 - ※予約不可、カード・電子マネー不可、PayPay可
- PROFILE
- 魔女っこれい
- 60歳のおじさんです。ワケあって若い女の身体で飲み歩いてます。https://twitter.com/majyokkorei