Begin Market(ビギンマーケット) COLUMN ARTICLES デニムブランド〈CRT〉と別注ブラックジーンズを深堀り。豪華対談が実現です!

2024.11.18

デニムブランド〈CRT〉と別注ブラックジーンズを深堀り。豪華対談が実現です!

LaLa Beginが千駄ヶ谷のセレクトショップ「THE MOTT HOUSE TOKYO」と共に別注した〈CRT〉のブラックジーンズ。2024年10月19日~20日には試着販売会も開催しご好評をいただきました。

今大注目のデニムブランド・CRTですが、「そもそもCRTって?」「デザインソースとなった“ディナージーンズ”って何?」「フラッシャーに込められた意味は?」などなど、気になることがいっぱい!という人も多いのでは?

生産背景や作り手のこだわりを知るほど、魅力的に見えてくるのが洋服の面白いところ。今回は、なんとCRTのブランドディレクションを手がけるトロピカル松村さん、デザイナー・八橋佑輔さん、そしてTHE MOTT HOUSE TOKYO店主・柴田麻莉さんへのインタビュー取材が実現! 生まれるべして生まれた1本のブラックジーンズについて語っていただきました。

左から、八橋佑輔さん、トロピカル松村さん、柴田麻莉さん。KUROやCRTを取り扱う東京・富ヶ谷のオフィシャルショップ「THE BLUE STORE」にてインタビュー開始!

──70~80年代のファッションやカルチャーに造詣が深い編集者のトロピカル松村さん(以下、トロ松さん)と日本が誇るデニムブランド〈KURO〉のデザイナー・八橋さんがタッグを組んだCRT(ブラウン管の意。ジーンズのモデル名もテレビになぞらえて1CH、2CH……と名付けられている)。70年代後半~80年代前半に“ディナージーンズ”と呼ばれ流行したジーンズをインスピレーション源にしているとのことですが、そもそもディナージーンズとは何なのでしょう?

トロ松さん ディナージーンズというのは通称で、いわゆるデザイナーズジーンズのこと。2000年代に〈トゥルーディビジョン〉や〈チップアンドペッパー〉、〈ヤヌーク〉といったインポートジーンズが流行ったときがありましたよね。その始まりっていうのが、遡って70年代後半~80年代初頭。当時は細部にデザイン性があったり、デートにも着ていけるようなちょっとドレッシーなジーンズということで日本で“ディナージーンズ”と呼ばれ、一世を風靡したんです。ブランドでいえば〈サスーン〉、〈ジョーダッシュ〉、〈スタジオフィフティーフォー〉、有名なところだと〈カルバンクライン〉など。僕がそういったジーンズを持っていて、それを見た八橋さんが「これ、おもしろいじゃん」って。じゃあこういうジーンズを作ってみようよ!って始まったのがCRTなんです。

トロピカル松村(とろぴかる・まつむら)

さまざまなメディアで編集者・ライターとして活躍するかたわら、二子新地で70~80年代のヤングカルチャーにフォーカスした私設ミュージアム「さんかくなみ」を運営したり、2022年にCRTを立ち上げたりとマルチに活動する。

──なるほど。CRTは特定のブランドや型のレプリカではなく、当時のムードをイメージソースに作られたジーンズなんですね。ちなみに、ディナージーンズにもヴィンテージジーンズのようなコレクターがいるのでしょうか?

トロ松さん いや、いない(笑)。ほぼゼロだと思いますよ。忘れ去られた流行というか……。

八橋さん 話し始めてから、ジョーダッシュとか、スタジオフィフティーフォーとか言っても誰もピンときてないですよね(笑)。いろんなジーンズ好きの人がいると思いますけど、かなり少数派なんじゃないかな。

──ブランド立ち上げ直後からCRTを取り扱っていたというTHE MOTT HOUSE TOKYO。柴田さんご自身も愛用されていますが、最初にはいた時に感じた印象はどのようなものでしたか?

柴田さん とにかくはきやすくて。私は古着のジーンズをはくことが多かったので、あまり現行ブランドのものは持っていなかったのですが、これは普段の装いにもなじむ感じがしました。形もきれいだし、日本人の体形に合っているのもいいな、と。

トロ松さん ジャパニーズジーンズでやらせてもらってますからね(笑)。

柴田麻莉(しばた・まり)

THE MOTT HOUSE TOKYO店主。“ニューヨークと東京、ふたつの街を繋ぐショールーム”というコンセプトを掲げる同店には、国内外からセレクトしたさまざまな生活雑貨や食料品、花までが並ぶ。

──お店でCRTのジーンズを買っていく人はどんな方が多いのでしょう?

柴田さん デニム愛好家の方はもちろん、あくまでひとつのファッションアイテムとして取り入れたい、という方にも手に取っていただいています。2023年3月にもポップアップイベントを開催したのですが、当時はオンラインでしか買えなかったので、実際にはきたいという方が多くて。男性も女性も、カップルでも、たくさんの方にお越しいただきました。

トロ松さん 当時のディナージーンズも、男女問わずめちゃくちゃ愛されていたんです。女性誌なら『JJ』とか『Fine』、『Olive』、『GALS LIFE』なんかを開いても出てくるし、かたや『POPEYE』などの男性誌でもよく取り上げられていて、それってジーンズならではのことかなと思いますね。

──今回の別注にあたり、デニム作りの現場ではいくつものトライがあったとお聞きしました。八橋さんの目線で、特に苦労した点はどこでしょう?

八橋さん ちょうどいいグレーを出すのが難しかったです。デニム生地の縦糸と横糸、どちらも黒だと真っ黒になるから、はっきりとブラックデニムらしい仕上がりになるんですけど、今回は横糸が白い糸なんですね。そうするとリジットの状態はインディゴに近いような質感になって、洗えば自然とグレーになるかと思えばそうでもない。白い糸の出し加減というか、黒から徐々にグレーに寄せていく洗いの作業に苦戦しましたね。

八橋佑輔(やつはし・ゆうすけ)

独学でデザインを学び、2010年にピッティ・ウォモにてKUROを発表。日本各地の職人の技術を生かしたモダンでタイムレスなアイテムに定評がある。服作りの現場を熟知したデザイナーとしてCRTに携わる。

トロ松さん じつはこの色にも着想源があるんです。イメージは80年代中頃から後半。スポーツ&健康ブームの少しあとにやってきたマインドフルネスカルチャー。あの頃はニューエイジサウンドが流行っていて、今回のグレーがその雰囲気に合っている気がするんですよね。真っ黒だとやっぱり“ロック”じゃないですか(笑)。それよりはむしろ80年代の吉村 弘とか小久保 隆のような、主張しすぎないヒーリング音楽のようなイメージ。

──今回の別注のために用意していただいたフラッシャーにも、レコードとミラーボールの写真、そして「音楽」というキーワードが載っていますね。

トロ松さん このレコードは吉村 弘の『A・I・R』と小久保 隆の『新・呼吸アルバム』。80年代中頃にリリースされたニューエイジ、アンビエントの名盤です。これは裏話だけど、CRTの各モデルにはそれぞれテーマのようなものを設定していて、例えばこれをはいてローラースケートをしたらかっこいいだろうなとか、サーフィンへ行くのにぴったりだとか……バギーシルエットを作った時には雪山へ行くのをイメージしていました。それでいうと、今回のジーンズのテーマはマインドフルネスとかメディテーション。主張の強いブルージーンズとは対照的ですよね。

──確かに、デニムに苦手意識のある人でもすんなり取り入れられそうな、ニュートラルな印象です。柴田さんだったらこの絶妙なグレーのジーンズをどう着こなしたいと思いますか?

柴田さん 個人的に好きなのもありますが、お店でもヴィンテージやユーズドのアイテムを扱っているので、古着と組み合わせたら素敵だろうなと思いました。あとやっぱり色物のトップス。これからの季節だったら赤のセーターとかスウェットとか、鮮やかな色が映えると思います。

──今日もブルーのTシャツに合わせていますね。裾を折り返してはくのもニュアンスが出て素敵です。

八橋さん 丈が長ければ、THE BLUE STOREに持ち込んでいただければパッカリングやアタリを残して裾上げすることもできます。でも、このジーンズはいわゆる“ジーンズのお決まり”に倣わなくてもいいと思うんですよね。裾もあえてチェーンステッチにはしていないですし。形もスラックスっぽいから、普通に短くしちゃってもいいと思います。

──ジーンズといえば色落ちやエイジングが重視されがちですが、そういった“王道アメカジ”な世界観とはまた違う自由さも、CRTならではの魅力だと思います。

トロ松さん ジーンズを媒体にしてカルチャーを発信するっていうのがCRTのコンセプトであり、一番大事にしていることなんです。ディテールやカラー、フラッシャーから80年代中頃のムードや音楽シーンを感じてもらえればうれしいですね。きっとLaLa Begin読者の皆さんにも刺さるんじゃないかと思っています。

CRTのストレートモデル「1CH」のブラックジーンズが手に入るのはTHE MOTT HOUSE TOKYOとBOYNAだけ。数量もわずかなので、気になる方はお早めに!

東京都渋谷区千駄ケ谷3-27-8
営業時間:12:00~18:00
Instagram:@themotthousetokyo

 

東京都渋谷区富ケ谷1-34-11 森林ビル 1階
営業時間:12:00~20:00(土日祝は12:00~19:00)
Instagram:@the_blue_store_tokyo


※掲載内容は発行時点の情報です。

photo:Saori Fushimi

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