Begin Market(ビギンマーケット) COLUMN ARTICLES グラフィックデザイナー・今井晶子さんの「推し床」って? 足元にはステキがたくさん♪

2024.08.20

偏愛レボリューション

グラフィックデザイナー・今井晶子さんの「推し床」って? 足元にはステキがたくさん♪

[LaLa Begin2021年 4-5月号の記事を再構成]

偏愛レボリューション~Vol.6「ステキな床」今井晶子さん

街中で思いがけず個性的な模様のタイルやかわいい色柄の床に出逢うと、こんなふうに撮ってしまうことありませんか。

今回の偏愛ビトはそんなステキな床に惹かれて、日本全国ひたすら下を向いて床を探している、今井晶子さんです。今井さんおすすめの、ベトナムのセメントタイル(まだ日本ではあまり取り扱いがなく珍しいのだそう!)が美しい、丸の内のカレースタンド『FISH 丸の内店』でお話を伺いました。

こんな今だからこそ(足)下を向いて歩こう

早速ですが、床の魅力ってなんですか?

「なんというか、決してセンターになれない、地下アイドルを見ているような……」

いきなり予想外の答えが。

「こんなに美しくて芸術的だし、とても貴重なのに、ちゃんと見てもらえず、しかも毎日踏まれてる。元々、昭和レトロな喫茶店とか建築とか、そういうものを巡るのは好きだったんです。でもあるとき、毎日利用している西武池袋線の池袋駅の床が新しいものに張り替えられていて、すごく違和感があったんです。そこではじめて床に意識が向くようになって、それからは喫茶店に行っても街を歩いていても、ついつい床を見てしまって。まだ誰にも気づかれていない、日の目を見てない地下アイドルのような床はたくさんあるんじゃないかと、私の推し床=推し面を見つけたいと夢中になっていました」

イイ床あるところにイイ店主あり

古い喫茶店とか地下街とかにはイイ床ありそうだなーって想像がつくんですけど、普段はどんなふうに探してますか?

「もちろんSNSを見たり情報をもらうこともあるんですが、昔ながらの個人商店が充実している商店街はワクワクします。あと情報収集として意外におすすめなのが「食べログ」ですね。おいしそうなフード写真の後ろに、時々イイ床がうっすら映り込んでるんです」

なるほど!ってことは、すでに私たちのスマホの写真フォルダにも?

「そう、魅力的な床は身近にたくさん潜んでるんです」

床の写真を撮る時に意識してることはありますか?

「お店の床を撮らせてもらいたいなと思ったら、少額でもなにか買ったり飲食するようにしてます。お店の人とコミュニケーションをとりながら、床のことを尋ねると思わぬエピソードや愛着を聞けたりすることもあるんです。イイ床あるところにイイ店主ありです」

名言でました!

「あと、今日は床を探しに行くぞって日は、一緒に撮るための靴を何足か持ち歩きます。床に合わせて履き替えたいので。この靴はあの床に映えそうだなーとか思って買っちゃうので、手持ちの靴がどんどん派手になっていくんです。靴を買ったらそれに合う床をまた探しちゃったりして、楽しさが無限ループなんです。でも、撮るときはあくまで床が主役なので、映り込む靴はどんなにお気に入りでもほんのちょっとって決めてます」

赤靴が映える、クリーニング屋さんの40年モノの床。床と靴は補色を意識して。

黒と赤のハート型のタイルがあるのは熱海の神社。主役はタイルなので、靴は控えめに。

だから今井さんの床の写真には統一感があるんですね。上手く撮るコツってありますか?

「ちょっと広めに撮ってトリミングすると歪みが出にくいですよ。あとは自分が影で写り込まないように注意したり、同じタイルでも立つ位置を斜めにしてみたりすると雰囲気が全然違ったりしますよ」

自分が影にならないように立って、こんな感じでボトムスをキュッと挟んで撮ってます。足や靴はちょこっとだけ。

床と靴とソックス、青3色の組み合わせが爽やか。敢えて斜めに立って撮るのもアリ。

グッとくるステキな床を求めて7年以上経っても、いまだその探索欲は落ち着くどころか、より高まっているという今井さん。自由に旅行できるようになったら行きたいところはありますか?

「山口県に、お相撲さんがつくった『玉椿旅館』という温泉宿があるんですが、著書(下写真)の表紙と同じ柄の色違いの床が現存してるそうなんです。いつかその床を撮りに行くのを楽しみにしながら、今はあらためて地元周辺をのんびりパトロールしてます。灯台下暗し、知ってるようでやっぱりまだまだあるんですよね」

2017年に床採集仲間との共著『足の下のステキな床』を発売して以来、本のタイトルをハッシュタグにして、SNSに全国から続々と“イイ床”の投稿が。

何年も床を見続けていると、意外な場所で同じ柄や色違いのタイルに遭遇することも。「時間を掛けて日本中で神経衰弱してるみたいで、テンションあがります」

なかなか遠出もできない今だからこそ、いつもと違った目線でご近所を歩いてみるだけで、ステキな床、ステキな出逢いがあるかもしれませんよ。

調査報告

「ステキな床は意外と身近なところにありますよ」今井さんの著書には、なんと私の自宅から徒歩数分のお店が載っていてビックリ。灯台下暗し! あらためて地元をゆっくり歩いて探してみようと思いました。ちなみに私の推し床=推し面は、パシフィコ横浜国立大ホールの2階ロビーの絨毯。

※掲載内容は発行時点の情報です。

[LaLa Begin2021年 4-5月号の記事を再構成]写真/久保田彩子 インタビュー・文/オモムロニ。

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