偏愛レボリューション
ファッションエディター・大平かりんさんが偏愛する「つっこまれ服」って?
[LaLa Begin2020年 8-9月号の記事を再構成]
偏愛レボリューション~Vol.2「つっこまれ服」大平かりんさん
今回の偏愛ビト、ファッションエディターの大平かりんさんとの出会いは約10年前。それから今の今まで、一度として同じ格好をしてるのを見たことがないんです。しかも毎回「それどこの?」「この服どうなってるの?」とつっこまずにはいられない個性的なアイテムばかり。聞けば新進気鋭のデザイナーだったり、旅先で買った古着やヴィンテージだったり、さすがはモード誌の中の人。
でもそういった服の裾からチラッと見えるキャラものソックスや、ハイブランドと合わせたTシャツがプロレスグッズだったりして、所々にただようギーク感。彼女の、いわゆるファッションマニアとは違う服への愛、そして“つっこまれ服”の数々、調査してきました!
アイテムもコーディネートも日々アップデート
「学生時代は、パリコレに興味がある程度でファッションにも詳しくなくて、その時々の彼や友達の影響を受けて、古着ばっかりになったり、ヒップホップ系になったり、UKロックバンドのスタイルに憧れたり。むしろ映画とか音楽とかのほうが好きだったので、そのカルチャーを深掘りしていく流れでそのファッションにもハマって、そして歴代の好きなものがミックスされて、今ごった煮の状態です」
今回勝手に“つっこまれ服”なんて呼んじゃってますが、服を買うときに意識してますか?
「合わせる服とか○○スタイルとか、あんまり考えないです。デザイナーのインスピレーション源に共感したり、純粋にモノの魅力がすごい!って感じる服をどんどん買っちゃいます」
というわけで、最近の“つっこまれ服”を見せてもらいました!
一見スタンダードなGパンに見えて、左右でシルエットが違いすぎる〈FACETASM(ファセッタズム)のBIG&SLIMなデニムパンツ。
「このデニムは右と左で太さが極端に違うんですけど、これをはいて電車乗ってるときはみなさんの視線を感じますね。それから着てると人に触られまくるのが、袖が6本あるユニオンジャックのニット。手編みですっごく重たくて、上に何も着れなくなっちゃうんですけど、こういうのに弱いんです」
〈 リトゥンバイ〉の6本袖ニットは足も入れてオールインワンにもできる(けどしたことない)。
大きなカバンから次々と奇想天外な、でもめちゃめちゃ魅力的な服が出てきます。なかでもスタッフ全員の目がハートになったのがプリーツスカート。
新進気鋭のロンドンブランド〈チョポヴァ・ロウェナ〉「韓国のアイドルも着てますね」
「これはよくどこの?って聞かれますね。一見伝統的な雰囲気なんですけど、極太のベルトやカラビナみたいな金具が一筋縄じゃいかないロックテイストで。あとこのシャツ、よーく見るとおっぱい柄なんですけど、実はこれ、フィービー時代のセリーヌなんです。このブランドにこんな服あるの?っていうのも好きです」
「 え、これも〈セリーヌ〉なの? しかもフィービーの?」って驚かれるのがちょっと嬉しい。
365日同じ格好はしないがモットーの大平さん。着る服やコーディネートはどう決めてますか? 事前に考える?
「その日の朝ですね。偶然性を大事にしてます。例えば前日に見た映画の余韻が残ってたらそれを服で表現したり。その日会う人に合わせたりもします。以前キャラものソックスの話が出たので、今日も履いてきましたよ」
ショートヘアに首の詰まったトップスがトレードマーク。〈ラフ シモンズ〉でキメた日も、実は足元につっこまれ服が忍んでるのです。
そうこれこれ! でも確かに、前日見たライブの興奮さめやらぬ気持ちを、服のどこかに忍ばせたりするのって楽しそう。バッグや靴はどんなものが?
「それが……じつはほぼ100%エコバッグかトート。それもミュージアムショップとか旅先のお土産とか、自分でも不思議なくらい無頓着で。仕事柄ひと通りの新作はチェックしますけど。靴もほぼスニーカーです」
確かにインスタをチェックすると、見事にオンリー布バッグ。ファッション好きはバッグとか靴に最もときめきを感じてそうなイメージでしたが、なんだかその偏った感じも面白いです。ちなみに、こりゃ失敗したなーってことありますか?
「もちろん! 買ったはいいけどいつ着るんだ?みたいな服がクローゼットに山ほどあります。コーディネートも一応TPOはわきまえてるつもりなんですけど、そのさじ加減を間違うときも。誰からもつっこまれなくて、あれ、やっちまった?って日も」
「なんか元気出る」って言ってもらえたり
最後に、“つっこまれ服”の魅力について聞いてみると
「ファッションに関わる仕事をしているからってこともありますけど、洋服がコミュニケーションになってるなぁって思うことが多くて。街中で知らない方が褒めてくれたり、職場でも「なんか元気出る」って言ってもらえたり。褒められてるのは私じゃなくて服だって分かってるんですけど、その言葉ってすごくポジティブなパワーになるんですよね。そういう言葉をかけてもらえるきっかけになってるので、洋服には感謝してるんです」
ええ話! 長く着られる安心・安全なスタンダード服も、自分が心地よくウキウキするなら素敵だけど、これ着てれば間違いないとか、失敗しないとか、消去法で選んでいるとすれば、それはちょっともったいないかも。いきなり6本袖やおっぱい柄なんて難しいけど、インパクトTシャツやチラッと見えるソックスをちょっと冒険してみるのはいかが?
大平かりんさん
東京生まれ。雑誌『GINZA』を中心に活躍するファッションエディター。365日同じ格好はしない自由すぎる私服スナップが話題に。Instagram(@ko365d)にも注目!
調査報告
衣装持ちでありながら、カバンや靴には興味ないという偏愛っぷりがユニークでした。「服のおかげで後輩や初対面の人にも話しかけてもらいやすい」と言ってたのもイイなと思って、お土産でもらったまま履いてなかったヨン様ソックスを最近履いてます。誰か気づいてー!
偏愛調査員
オモムロニ。
雑貨コーディネーター。雑貨や日用品、手みやげはパケ買いが得意。偏愛ジャンルは、プロ野球、ハロプロ、AMラジオ、猫。著書に『DAILYGIFTBOOK 気持ちが伝わる贈りものアイデア』(文藝春秋)がある。Instagram:@omomuroni
連載
偏愛レボリューション
偏愛は毎日をちょっと楽しくする小さな“革命”! どんなにマニアックだとか、ファン歴なんて関係ないのです。いつの間にか夢中に……あぁ、“好き”があるってしあわせ。そんな偏愛ビトをレポートします。
連載目次はこちら
※掲載内容は発行時点の情報です。
[LaLa Begin2020年 8-9月号の記事を再構成]写真/押尾健太郎 インタビュー・文/オモムロニ。