マジカルファクトリーツアー
着るだけで癒やされる~♪ そのヒミツは糸にアリ⁉ 老舗紡績メーカーをレポート!
MADE IN NIHON と書かれたタグでおなじみ、日本生まれの良質なカットソーブランド、フィルメランジェ。私もいくつか所有していますが、何せ着心地がまろやか、リラクシー。そのワケが糸にある、と聞きつけて、今回訪れたのが大正紡績。
担当 スズキ
フィルメランジェのラフィアイテム
@大阪府阪南市
目的:腕を通すたびに癒やされる着心地のワケを知りたくて
子育て真っ最中&機動力重視で、ざぶざぶ洗えるカットソー(衣替え以降はほぼノースリーブ)+デニムがマイ定番。愛用品&仕事柄、カットソーの着心地には一家言アリ。
1│混打綿
\シート状の原綿をほぐす/
原綿は堅く圧縮され、俵のような荷姿で輸入される。原料である綿花の種類によって、色や質感に違いが見られ、個性がある。超長綿を引きちぎってみると確かに繊維の長さがわかる!
\段階を経てふわふわに!/
圧縮されている原綿をほぐす「開綿」、付着している葉かすや種子片などのゴミを除去する「除塵」、綿以外の素材や異なる種類の綿を混ぜ合わせる「混綿」という3つの作業を行う。
大正7年創業、老舗紡績メーカー大正紡績が生み出す糸の特徴は、ナチュラルなムラ感。特に大正紡績のブランド糸「ラフィ」にはその魅力が顕著に現れます。
2│カード
\まるで綿あめ!?/
さらに不純物を除去し、1本1本の繊維がばらけるように、繊維を一定方向に揃える。きれいになった綿はふわふわ! この工程でロープ状にしたものをスライバーという。
3│コーマ
\引き延ばされて繊維が並行に/
英語の「comb =くしけずった」のように、繊維を除去し、引き延ばして繊維を平行に揃える。繊維の均一度が上がり、糸の光沢も増す。ラフィではこの工程は行わない。
独特なムラのワケは、糸をつくる工程で混ぜる落ち綿。上記の「コーマ」という段階で、繊維の長さが短いがためにはじかれてしまう、いわゆる規格外の綿を、むしろ混ぜ込むことで、味わいのある糸に。いかに均一で美しい糸を作るか、が重要視される紡績業界においては、ムラを魅力と打ち出したラフィは異端児的な存在。
大正紡績
取締役 製造部長
枝松正倫さん
落ち綿を混ぜ込んで、風合いのある糸に仕上げていくラフィの紡績は、手間暇のかかった究極のこだわり。枝松さん曰く、機台によって「ムラの顔が変わる」のだそう。
4│練条
カードやコーマの工程を経てできたスライバーは太さや重さにムラがある。このスライバー6~8本を合わせて引き伸ばす作業を2~3回繰り返し、太さを均一に整える。
アメカジが日本のファッションの定番として育っていく中で、このラフィが評価されるようになったそう。フィルメランジェでは落ち綿もオーガニックコットンのものを使うというこだわりの詰まった、別注のオーガニックラフィが定番的に採用されています。
5│粗紡
練条を経てできたスライバーを更に引き伸ばし、強度を持たせるために甘く撚りをかけていく。できあがった毛糸ほどの太さの糸を粗糸と呼ぶ。
BBAアソシエーション
執行役員 生地開発
昼間直己さん
「商品の構想段階から糸のことを考えている」と、昼間さん。素材と糸が商品の仕上がりを左右すると認識しているから、「商品づくりは大正紡績と二人三脚」なのだそう。
6│精紡
\素材を生かした“糸”の姿に!/
粗糸を引き伸ばして撚りをかけ、最終的な糸の形に。この工程で撚る回数によって、糸の風合いもかわる。大正紡績では、1953年に製造された精紡機が現役(!!)で稼働中。
素材本来の美しさや不完全さを生かした、まるで手紬のようなラフィの風合いは“ゆらぎ”と評価されるのだとか。四季のうつろいや気候の変化によってもたらされる自然の様相の変化や炎の揺らめきなどの“ゆらぎ”は人にやすらぎを与える、なんて近年話題に上がりますが、このラフィ糸もきっとそう。だから着ているとリラックスできるのか~、としみじみ納得して取材を終えたのでした。
完成したアイテムがこちら!
上の2点は大正紡績のオーガニックラフィを使用。上から丸胴使いの吊り編みスウェットシャツのROLF3万1900円、ボックスシルエットデザインのT シャツLIDA1万2100円、ムラ感が強めで味のあるラフィを使用している針抜きリブのタンクトップNES1万1000円(以上フィルメランジェ)
フィルメランジェ 公式通販サイト
https://filmelange.com/
連載
マジカルファクトリーツアー
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※掲載内容は発行時点の情報です。
[LaLa Begin 2024年 SUMMERの記事を再構成]photo : Shunsuke Musashi text : LaLa Begin