装い今昔物語
海外でも流行中!【紺ブレ】ブームは90年代にも! 当時話題になった“キレカジ”って?
キレカジと紺ブレブームと浅野ゆう子立ち
いであつこ
仏・イボルンヌ大を首席で卒業。平成服装女子学院トレンドマスコミ学部准教授。服飾誌研究家として活躍中。コラムニストのいであつしとは双子の兄妹。
ネイビーブレザーが流行っています。海外のインフルエンサーにもネイビーブレザーにベースボールキャップを被った今どきのアメトラな着こなしが大人気です。ボーイな女のワードローブにもネイビーブレザーは欠かせません。
これまでもネイビーブレザーのブームは何度もありました。以前このコラムで紐解いた1970年代の後半に流行ったハマトラや、80年代前半の第一次プレッピーブームなどです。なかでも90年〜91年に流行ったキレカジの時は「紺ブレ」と呼ばれて大ブームになりました。キレカジとは「キレイめカジュアル」のこと。この時代は、渋カジから派生したキレカジやデルカジなどいろんなカジが現われて流行ったのです。
キレカジの典型的な格好は、「ポロ ラルフ ローレン」のダブルの紺ブレに、「アイクベーハー」や並行輸入のラルフのBDシャツを着て、「バリーブリッケン」のチノパンをはいて、「レスポートサック」のナイロンバッグに、「ティンバーランド」のモカシンがお約束です。キレカジ御用達のブランドが揃っていた渋谷のアメカジショップ「ラブラドールリトリーバー」は高校生や大学生に大人気で、渋谷を歩いている若い子たちの3人に1人は制服のようにラルフの紺ブレを着ていました。
この時代はトレンディドラマが全盛期でした。90年に放映されて大ヒットしたドラマ『東京ラブストーリー』で、鈴木保奈美さんが演じるOLの赤名リカが紺ブレを着ていて、ネイビーブレザーの人気はOLにも広がったのです。
なかでも88年に放映されて社会現象になったトレンディドラマ『抱きしめたい!』で、浅野温子さんと「W浅野」と呼ばれて一世を風靡した浅野ゆう子さんのコンサバなネイビーブレザーの着こなしが大人気でした。みんなが真似をして、赤文字系フアッション誌で特集されるほど流行りました。
例えば91年3月号の『JJ』を紐解いてみると、表紙から浅野ゆう子さんです。「元祖・浅野ゆう子の紺ブレスタイル」というページでは、「なぜかマリンにはダブルが似合うんですよね」という見出しで、ダブルのネイビーブレザーを着て、白いシャツをネイビーのベルトで白いパンツにタックインしてブラウジングして、ホワイトバックスを履いています。
他にも「ジーンズにはシングルが好き。エンブレムつきなら、なお素敵」という見出しで、シングルのネイビーブレザーにピンクのオープンカラーシャツを着てスエードのフルブローグを履いて、ジーンズのポケットに両手を入れて屈んでポーズをとっています。
でました。これが世にいう「浅野ゆう子立ち」です。ちなみに、浅野ゆう子さんが着たアイテムはほぼ「シップス」のものです。これはセレクトショップ業界では今や伝説になっていますが、当時シップスの敏腕プレスだった中澤芳之さんが浅野ゆう子さんの専属スタイリングを担当して、紺ブレブームが起きたといわれています。雑誌で浅野ゆう子さんが着た翌日は、シップスの店内はセールのように込み合って着用したアイテムは瞬く間に売り切れたそうですよ。
(おせっかいな)ファッション用語辞典
海外のインフルエンサー
最近、日本のアメトラスタイルは海外でも大人気。ネイビーブレザーにベースボールキャップを被った、典型的なジャパニーズアメトラの投稿を米国や韓国のファッションインフルエンサーのインスタグラムでよく見かける。
デルカジ
「モデルカジュアル」の略でメンズファッション誌に出てくるモデルのような格好のこと。渋カジブームの終焉期に盛り上がった。典型的なアイテムは、古着のブラックリーバイスやアニエス・べーのスナップカーディガン。
中澤芳之さん
「シップス」の前身のアメ横の「ミウラ&サンズ」時代からバイトで働いてた、「番長」の愛称で親しまれたセレクトショップ業界の重鎮。2016年に惜しまれつつ永眠。葬儀にはファッション業界人が1000人以上参列した。
※掲載内容は発行時点の情報です。
[LaLa Begin 2024年 2-3月号の記事を再構成]text : Atsuko Ide comic : Takahiro Shimada