SEAM.SHOES(シームシューズ)のシームレスな作りの秘密を生産現場に取材!
BOYNAのお店にはたくさんのモノが並びますが、そのセレクトにはエディターのこだわりが満載。実際にモノづくりの裏側を取材しながら、マッチするアイテムを厳選しています。 この連載ではその“裏側”を一部大公開。アイテムができあがるまでに込められた思いや、こだわりのポイントを交えてご紹介します。
出勤はもちろん、出張にお出かけに新年から走り回っている方も多いのでは。そんな時どんな靴を履いていますか。
“いい靴はいい場所に連れて行ってくれる”と昔から言いますが、それはお仕事靴も普段もそう。履きやすく快適な“いい靴”を履けば気分も足取りも軽く、いつもより遠くまで足をのばせるかも。
お仕事もお出かけも、ハレの日も雨の日も活躍してくれるのが「SEAM.SHOES(シームシューズ)」のLOAFER LIGHT。
外見はシンプルですが、作りを見るとこだわりがたくさん。天然皮革を使用していながら、防水透湿を誇るので、水を弾いてシミになりにくい。本革なのに晴雨兼用なんです。おまけにソールはビブラムソールを採用。なが~く歩いても疲れ知らず。
東北に構える実力派靴工場が立ち上げたオリジナルブランドなだけあり、つくりは一級品。メゾンや大手ブランドの靴を手掛けてきたスキルを存分に発揮して作っています。
革の型抜きから検品までほとんどすべてを自社で一貫生産しているからこその、丁寧な作りが宿っていました。そこまで人の手でやっているの!と驚く工程ばかりでしたよ。「夜遊びから法事まで」をコンセプトにすべての人が心地よく、スマートに履ける靴を目指して現在もより良く、日々進化させながら開発しています。
そんなシームシューズの靴が生まれる街、秋田県大仙市に取材を敢行。大曲の花火が有名な大曲駅が最寄り駅です。
今回はエディター兼バイヤー、カトウが訪ねました!
記事を書いたのは...
担当 カトウ
三度の飯には米がいい!炭水化物どんとこい。今回の出張では秋田米に日本酒、地魚といただき、すっかり秋田に魅了されました。出張帰りに2kg増です♪
大曲駅から車で10分ほどのところに三角屋根の工場を発見。株式会社ユーイーアイの水色の看板が目印です。
シームシューズは実力派靴メーカーUEIのオリジナルブランド。早速中に入っていくと、通路には納品前の靴が所狭しと並びドキドキ感倍増。
今回案内してくれたのは、代表取締役社長の加藤さん。
最初はお母さまが地域のお母さま方を集めて創業された弱電部品の会社がルーツ。そののち業種転換をし、靴の生産を開始。加藤さんはお母さまが靴づくりをしているのを見て育ったのだそう。その会社を引き継ぎ、今は2代目に。OEMの生産を行いながらも自社ブランド〈SEAM SHOES〉を立ち上げ、技術のつまった唯一無二の靴づくりを日々研究しています。
ビートルズファンで、「ANY TIME AT ALL」という曲からシームシューズのコンセプトを構想したのだとか。
加藤さん自身、出張が多く、靴一足で商談や飲み会に走り回れたら、という思いからシームシューズを企画。
さすが靴のプロ、シームシューズは設計、裁断、成型まですべて自社で一貫生産しているとのことで、工程を追って取材開始!
裁断
まずは裁断。いい状態の部分をいかに無駄なく効率的にとれるかを考えて金型で生地や革を裁断していきます。
シームシューズは1cm刻みでのサイジングにしているかわりに、足の微細なサイズに合わせて厚み違いの2種類のアジャスターインソール(靴の中敷きの下に敷くシート)を同梱しています。それもここで1つずつ型抜きして作っています。
設計部屋も雰囲気ありでロマンを感じる。
ちなみに革も独自で開発したオリジナルレシピの加工を施した革を使用。革屋さんにお願いして調整してもらい、
・防水透湿
・抗菌防カビ
・やわらかでなめらかな革
・本革の上品なツヤ感を保持
できる革を使っています。
ナンバリング
お次にナンバリング。ハンコのような機械で活版印刷のようにサイズ表記を銀箔でナンバリングします。そうすることで、次の工程に行く際にどのサイズの靴を作っているか一目瞭然でわかり、サイズ間違いもおきなくなるとのこと。地味だけど重要な手順。
縫製
続いて工場の2階で行われるのが縫製。接着剤により、貼り合わせと縫い付けを交互に行い、各職人さんが手渡しで連携をとりながらアッパーを立体的に形にしていきます。この工程は美しいローファーを作るうえで最も重要な部分。一般的なローファーはモカの部分を表から縫いあわせますが、シームシューズはちょっと違うんです。
左)縫い目が見えないからクリーンな印象に。
右)裏返すと縫い目が隠れて見えます。カーブに沿って内側に縫っていくのが至難の業。
片倒しといって、縫い目が見えないように内側に折り込んで縫っているので靴の顔がスマート。また、モカ部分がやわらかい孤を描く曲線になっているので、ここの縫い合わせは最難関。
1つ1つずれが生じないように丁寧に合わせていきます。表合わせで縫ってから、裏にくるりとひっくり返すことでキレイなアッパーの完成!
履き心地にもまごころを、この時に、かかとが痛くならないようにスポンジも仕込んで、という繊細で丁寧な心づかいも怠りません!
成型
少しずつ靴のカタチが見えてきたところで、つり込み作業で成型していきます。まずは蒸気と熱で、仕込んであるホットメルトの芯をやわらかくして、形成しやすく準備します。
そののち、トゥラスターという万力のような機械が、まるで指先で革の端っこをつまむように掴み、そこにワイパーブレードという板が滑り込んできて、革がきれいに木型に沿ってはられて登場。この時の革の種類やその時々の状態に合わせた、引きつけの力加減によってアッパーの表情が全然変わってくるんだそう。絶妙な設定と、手の感触のみで調整する、隠れた職人技がここでもキラリと光ります。
かかと側もヒールシートという特殊な機械で、靴の形になっていきます。土踏まずのあたりは職人が「ワニ」という工具を使って、一足ずつ、手で木型に沿わせていきます。
この後はソールを貼るまで丁寧に美しい状態にしていきます。
シワ取り〜やすり掛け〜ソールの圧着
高熱でシワをとって、底張りをしやすいように革をやすり掛け、ソールの圧着と、どの工程も手作業で進めていきます。
仕上げ
仕上げは今まで以上に丁寧に。余計なノリをブラシでとり、ベースコートという下地の役割をする液をしっかり塗り込みます。上から乳化性のブラッククリームでより深い黒に仕上げます。
上品で落ち着いたツヤ感が出てきた出てきた~!布製の円盤ブラシでより細かなツヤだしも忘れずに。
検品〜出荷
検品・出荷も怠るなかれ。形成途中で使用していた釘やタッカーの芯が残っていないか今一度真心こめてチェック。受け取ったときに豊かな気持ちになってほしい、という心配りから、職人さんが一足一足不織布に包む姿は、わが子を旅に出させる親のようにも見えました。
河上から河下まですべての工程を取材させてもらって、私もなんだか感慨深く……。正直こんなにもいろんな方の手によって作られていたとは。もっともっと大事にはきたいなあ、と思いました。
縁の下の力持ち。まさに、我々の体を支えてくれる靴は、たくさんの人の手によって外に踏み出していく私たちを見送ってくれている親のような存在なのかも。
取材を通して、シームシューズは、すべて一貫して手作業で作られているこだわりが各工程で見受けられました。働かれている職人さんの人柄も相まって、愛情とプライド、熱意をもって作られている姿にも心を打たれました。
秋田はうまい飯と酒!が有名と思っていたけど、長く愛せる靴も名品の一つになっているなあ、と実感……。
「足元から自信をもって自分らしく踏み出せる靴を作りたかったんです。Fit for all.で隔たりなく、すべての人にシームレスに届く靴を、ココ秋田から発信していきます。まだまだもっと進化させる予定です!」と加藤さん。
シームシューズのいつでもどこでも誰でもはける靴と一緒にもっといい場所に歩んでいく覚悟が垣間見えました。
新しい年始め、足元からNEWに始めてみるのも吉。シームシューズのローファーはスニーカー感覚で履けるのに本革仕様の本格派。お出かけはもちろんお仕事靴としても最適だから、気乗りしない会社出勤も気楽に足取り軽く頑張れる!
本革でも透湿防水で雨の日もへっちゃら。どんな状況もタフに乗り越える大人顔の手作りローファーは毎日のお守り靴になること間違いなしです。
今年も足元から足取り軽く頑張りましょ!
今回ご紹介した商品:
SEAM.SHOES/シームシューズ LOAFER LIGHT
25,300円 (税込)
▼COMPANY DATA
株式会社ユーイーアイ
〒014-0067 秋田県大仙市飯田大道端40-14
TEL:0187-63-8027
▼editor’s memo
大曲駅周辺には古民家を改修したセレクトショップやおいしい居酒屋もあり!大曲の花火大会には多くの方が全国から来るみたいです。シームシューズの工場からも花火が見えるのだとか。いい土地にイイ人がいていいものづくりが培っているんだな、しみじみ。
※掲載内容は発行時点の情報です。
写真/武蔵俊介 編集部スナップ・文/加藤瑶子(LaLa Begin)