「TIDEWAY(タイドウェイ)」オリジナルのMOSSレザー生産現場に突入!
BOYNAのお店にはたくさんのモノが並びますが、そのセレクトにはエディターのこだわりが満載。実際にモノづくりの裏側を取材しながら、マッチするアイテムを厳選しています。 この連載ではその“裏側”を一部大公開。アイテムができあがるまでに込められた思いや、こだわりのポイントを交えてご紹介します。
LaLa BeginのECでロングセラーのバッグといえば、TIDEWAY(タイドウェイ)のMOSSレザーシリーズ。艶やかで光沢のある高級感と、軽くやわらかくデイリーに使いやすいところに惚れ込み、多くの別注品をお願いしてきました。
2023年に発売したメタルツイストシリーズ。ハンドバッグはTIDEWAY、ショルダータイプはLaLa Begin別注。各1万8700円
MOSSレザーはTIDEWAYオリジナルの特別なもの。その開発は大変だった、と聞いていましたが、そもそもレザーってどんな風に作られているの!? というわけで、今回特別にタンナーさんのもとへ見学に行く機会を頂きました。
今回はエディター兼バイヤー、ナカムラが訪ねました!
記事を書いたのは...
担当 ナカムラ
とにかくバッグは絶対、黒派。汚すし雑だし飽き性なので、間違いのない黒だけ選択! このマイルールはしばらく揺るがない気がします。
取材に急行したのは兵庫県たつの市。名高い「姫路レザー」を生産している、全国でも有数の牛革の産地です。のどかな田園風景のさなかに突然、でん!と現れた大きなレザーに、とうとうやってきた!と心が躍ります。
吊るされたレザー
そもそもMOSSレザーは、2016年に誕生したTIDEWAYオリジナルのレザー。試作を重ね、状態を見ながら少しずつ改良してきたのだそう。企画・営業の北野さん曰く「長い目でやってきた」特別に思い入れのあるレザー。品質を追求するからこそ、それをクリアできる専門性の高いタンナーさんの手で作り上げているんですって。実際、工程がとても多く、手間がかかるのだそう。
それでは早速はじめの工程からリサーチ! タンナーさんに届くのは、防腐のため塩漬けされた状態の「原皮」。それにクロムなめしを施すことで、染色できる状態=この「ウェットブルー」になります。原皮についている害虫を駆除し、生地(完成した革になる前の状態は“下地”と呼ぶそう)の厚みを整えるのもこの工程。
ウェットブルーの山が綺麗にいくつも積まれています。印象としては、白みがかった水色でちょっと乾いた、厚い布のような感じ。
そして染める工程はいうと、案内されたのは高い天井に、大きな木製のドラム(通称“タイコ”)がいくつも並ぶ工場。稼働中は高速で回転しています。
この4つのドラムは一部で、まだまだありました。圧巻!
このドラムの中には出っ張りがあり、生地が回り、下に落ちるというアクションのおかげで洗い、染め、やわらかくすることができるんですって。長い時は半日回していることもあるとか。
使い込まれたドラムの姿は、重厚なオーラを放ってます。
ちょうど、黒く染まった生地を出すシーンを見学できました。このドラムは直径2〜3mくらいで、生地が50枚ほど入っています。まずは水をドバーッと排水!(真水を使っているそうで、こりゃ冬は絶対寒い。)
排水しきると、ドラムの中からひとつひとつ、バッサバッサと取り出します。濡れた大きな生地は見るからに重たそう。力が必要な手作業です。
取り出した生地は“うまかけ”と呼ばれる台に乗せ、きれいに伸ばし、そのあと吊るして自然乾燥させます。気温の低い冬場は乾燥に時間がかかり、2~3日は必要だとか。
階段を上った2階スペースに、ずらりと干されていました。
冬場は下地自体が固くなるので、薬品の量やドラムを回す時間も季節に合わせて調整します。ドラムを回していると、摩擦で温度が上がっていきますが、実際染める工程自体には温度は不要。ドラムの中の状態を職人さんが確認しつつ、丁寧に進めます。下地の厚みや柔らかさ、色の種類によってもあらゆる条件が異なるので、その調整が非常に難しいんだとか!
タイマーや計算機、ホワイトボートのメモが“微調整”の大切さを物語ります。職人さん達はドラムの中を覗き込んで、状態を丁寧に確認しながら進めていました。
染まったものを広げてもらうと、端っこに穴が……!と思ったら、これは脚の位置。付近をよく見るとシワがあり、これはそのまま“生きジワ”と呼ぶんですって。大きなシワのある部分は製品に使えないので、こういった部分をうまく避けて裁断するのだそう。
そして(これはモスレザーではありませんが)仕上げの“空打ち”と呼ばれる工程へ。今度は金属製の、木のドラムよりいっそう大きなドラムに入れて回されます。状態を確認するため、再度に丸い窓があるのが印象的。ときどき職人さんがドラムの中を確認し、時間を調整しながら様子を見ていました。
やわらかくきれいに仕上がり、ようやく完成! まるでコインランドリーからシーツを出すように、さささっと多くのレザーを運び出します。
そして円筒上にまるめられ、革屋さんに納品されます。つい欲張って、広げて見せてもらいました。とっても綺麗! 深みがあり、上品なツヤを持つMOSSレザーはこうやって作り上げられているんですね。
今回タンナーさんをお訪ねして実感したのは、想像以上にレザーづくりは“生モノ”であるってこと。
まず原皮の状態もひとつひとつ異なるし、気温や湿度にも影響されるので、使う薬品や工程の所要時間も都度、人の手で調整する必要があります。それで常に安定した、高い品質のレザーを供給するというのはとても難しいこと。ベテランの職人さんに「職人として、一人前というゴールはありますか?」と伺ったとき、「100点と思うと目がダレるから、常に80点を維持したい」という一言が返ってきて、ハッとました。いいバッグひとつとっても、それぞれの工程においてプロの仕事をこなす職人さん達の手が欠かせないんですね。
今回ご紹介した「MOSSレザー」を使用した商品:
LaLa Begin別注 メタルショルダー
18,700円 (税込)
LaLa Begin別注 ワントーンMOSSボストン
18,700円 (税込)
LaLa Begin別注 ワントーンモスボストンM
23,100円 (税込)
LaLa Begin別注 2WAY MOSSボストン
20,900円 (税込
LaLa Begin別注 モス2WAYボストン
19,800円 (税込)
※掲載内容は発行時点の情報です。
写真/迫田真実 文/中村美紀(LaLaBegin)