あなたがもし日本製のTシャツやスウェットをお持ちなら、その生地はたぶん和歌山で作られています。和歌山は、そう言っても過言でないくらい、丸編みニット(主にTシャツやスウェットなどで使われる)の一大産地です。”ニッター”と呼ばれる生地を編むファクトリー、そこでできた生地の洗いや加工を行う”染工所”が和歌山市・紀の川市エリアに集積しています。それぞれのニッター、染工所は切磋琢磨しながら、有する編み機や技術の違いを生かした千差万別の生地を作り、その多様性が世界からも注目される魅力となっています。そんな”和歌山ニッターズ”とBeginでお届けするのが「和歌山大莫小」。毎回テーマを設け、各社が自らの持ち味を存分に発揮した生地を共通ボディへと落とし込む企画です。
第7章は「タッグT」。一枚の生地を作るには、幾つもの工程とそれぞれの専門企業が存在します。素材・紡績・編み立て・染色・加工・仕上げetc……。またこれらの工程の間に、さらに撚糸や起毛といった専門業者が関わることもあります。この流れは一般的にはサプライチェーン(鎖)と言い、原料に近い方を川上、消費者側を川下とも喩えられます。しかし、和歌山ニットを見ていると、このイメージはなんだかしっくりきません。鎖も川も右から左の1次元的な表現ですが、実際の和歌山ニッターは、取引のある事業者はもちろん、同業他社、同業他社の取引先とも繋がり、2次元的な関係性を築いています。効率化を目的に真っ直ぐ引かれた線ではなく、時間をかけて有機的に広がった面。最近のビジネス用語では「サプライウェブ」とも呼ばれますが、和歌山のニッターはまさにクモの巣のようなリレーションシップを築いています。広がったネットワークからは、技術の掛け合わせや新しい工夫の余地が生まれ、千差万別の生地が出来上がります。今回のテーマは「タッグ」。和歌山大莫小メンバーが気になっていたファクトリーと手を組み、互いのアイデアとクラフトマンシップを一枚のTシャツに込めました。ほとばしる熱量をパックに包んでお届けします。
和歌山が丸編みニットの“聖地”と呼ばれる理由は、日本最大のシェアを誇ることに加えて、もう一点、“ここでしか編めない生地があるから”とBeginは考えます。和歌山でニットが作られるようになったのは1909年、スイス製丸編み機5台を輸入したのが始まりです。丸編み機は、円筒型のシリンダーに針がびっしり並ぶ構造で、回転しながら筒状に生地を編み立てます。伸縮性に富むソフトな風合いが特徴ですが、驚くべきことに和歌山では、100年前の吊り編み機から、最新スーパーハイゲージマシンまで、あらゆる時代の丸編み機が稼働しているんです。世界中で和歌山にしか現存しない機械も珍しくなく、ニッターは会社の壁を越え連携しながら、実に様々な生地を国内外へ提供してます。
OEMでの取引が多いため表に名前が出ることは少ないですが、和歌山産ニットの独創性と高い品質は欧米でも認められ、多くのメゾンやブランドで採用されています。ニッターは移りゆくファッション界のニーズや要求に応えるため日々、技術を研鑽。編み機の改造や、糸の開発、染色方法を考案したりと、ノウハウをアップデートし、新たなプロダクトを生み出しています。「伝統とは火を守ることであり、 灰を崇拝することではない」という作曲家マーラーの言葉の通り、100年以上に渡って和歌山がニット産地と呼ばれているのは、先人の築いた場所に安住するのでなく、炎に薪をくべるよう、創造を続けてきたからなのでしょう。和歌山大莫小もそんな精神から生まれた企画。挑戦的なプロダクトが多く揃います。
パックTと聞いて、シャツの下に着る薄手のインナーTシャツを想像する方が多いかもしれません。ですが、私たち和歌山大莫小が今回お届けするパックTはそれとは一味違います。アウターとして一枚で着れて、ポケットの有無や素材違いでリピートしたくなる。トレンドに左右されずにベーシックに着まわせる――そんなBeginのリクエストを形にしたTシャツです。
大人のラグジュアリーなスタイルを意識し、一般的なパックTよりゆとりがあるボックスシルエットを採用。衿はミリタリーやヴィンテージTで見かけるバインダー始末(身頃の生地を包み込むように縫製し首元がヨレにくくなる加工)。身丈はインと裾出しどちらもOKな程よい長さで着こなしの幅が広がります。ジャストサイズで着る方はもちろん、肩幅が小さめの女性や、華奢な方でもアームホールが綺麗に落ちるよう計算されており、着用者によって様々な表情を見せます。過去の和歌山大莫小のTシャツとの違いは、ブランドネームが変更された点。パックTらしく、従来の織ネームのネックタグを外し、プリントネームにしています。
「和歌山大莫小というブランドはスタート時から、数十年後も愛される定番アイテムを目指しています。なので、基本的には大きく変わることはなく、各社の素材に合わせ毎シーズン微調整しています」と話すのは、立ち上げからデザインを担当する馬場賢吾氏。今回は和歌山大莫小のイメージに合わせてオリジナルパッケージも作りました。
「パックTはアメリカの印象が強いですが、MADE in JAPANや和歌山をイメージして、できるだけモダンに仕上げました。文字やロゴはブランドカラーのオレンジを基調に、多種多様な素材の風合いを袋の外から見てわかるようにしています」(馬場さん)
ハイクオリティで個性豊か。今までのパックTの概念を覆す10のタッグTからあなただけのお気に入りを見つけてください。
2枚購入で2.000円OFF
パックTのお得要素も残しました
パックTといえば、2~3枚が袋に入った割安感も魅力ですよね。今回はその販売方法を再現し、2枚購入で2000円OFFでお届けします。
素材:ギャラクシーブラック999
「貴志川工業さんの技術って業界でもすごく評判が高いんです」
素材:ヒルメリー
「アウター使いできるアサメリーを作りたかった」
素材:撚りを戻したアサ
「麻とポリエステルをお見合いさせて“ええ糸”ができました」
素材:牛乳パックT
「紙糸の表面の凸凹を特殊な方法で滑らかにして柔らかさを出しました」
素材:わかふく同盟
「綿100%でトリコット生地が編めるのは業界でも知られていません」
素材:エイジングコットン無限キック
「柔らかさとキックバックを与える当社独自の樹脂加工を施しました」
素材:拝啓、大久保さん
「洗えるシルクは当社20年来の目標でした」
素材:2色シャーベット
「タッグと聞いて真っ先に思い浮かんだのが月城さんでした」
素材:ループエンジニア
「コメチウさんしか扱えない100年前の編み機があると知ってお願いしました」
素材:新しい綿のリーダーズ
「バイオフュージョンは真のオーガニックコットンです」
タッグTリリースを控えた2月某日、和歌山大莫小 代表・豊染工の田中大幹さんと前代表の風神莫大小の風神昌哉さん、そしてBeginの本田が和歌山県知事の岸本さんにお会いするため和歌山県庁を訪れました。知事室でスウェットとTシャツの実物を紹介した後、和歌山大莫小の取り組みについて報告。すると岸本県知事から驚きの発言をいただきました。
和歌山大莫小は不定期にPOP-UPストアを開催しています。製作したニッターやデザイナー、私たちBeginスタッフが店頭に立ち、和歌山ニットの魅力を直に伝える場を作っています。
今後のPOP-UPの開催については、和歌山大莫小公式インスタグラム、Begin公式サイトで随時お知らせしていきます。お近くの方は、ぜひ足をお運びいただき、袖を通して和歌山ニットを体感していただけたらと思います。
和歌山大莫小公式インスタグラム
https://www.instagram.com/wakayamadaibakusho/Begin公式サイト
https://www.e-begin.jp/和歌山でニットを手掛ける実力派ニッター・染工場の有志とBeginが手がける、和歌山のニットの魅力を世界に発信するプロジェクト。タイトルの「大莫小」(だいばくしょう)は、ニットを表す古い言葉「莫大小」(メリヤス)のアナグラムで「ユーザーもニッターも、みんながハッピーに」という願いが込められている。アメリカのUNION MADE(アメリカの労働組合である「ユニオン」の組合員が作った製品であることを示す表示で、消費者にとっては品質保証の意味合いがあった)をイメージし、その時々のテーマに沿って、参加ニッターが思い思いのニットを開発、同じ形の製品に落とし込む。2021年春の「白T」を皮切りに、第2弾「グレースウェット」、第3弾「白ポケT」、第4弾「黒スウェット」、第5弾「黒T」、第6弾「ネイビージップフーディ」、そして最新作「タッグT」と、半期ごとに新作を発表。定番だけど何かが違う、袖を通して初めてわかる和歌山ニッターの想いが随所に詰まったコレクションとなっている。
素材の良さを引き出し、各ニッターの持ち味がにじみ出る「ミニマルなデザイン」がテーマ。ボディは着る人を選ばない、ほどよくゆとりのあるモダンなシルエットを意識しました。1950年代の米国で人気に火が付き、以降タウンウェアとして受け継がれてきたスウェットを現代の解釈でアップデートしています。たとえば、脇下のリブや、衿ぐりのVガゼットといったクラシックなディテールは採用していません。これは当時の生地に、洗濯時の縮みや斜行といった問題があったため生み出された工夫で、現在、特に品質の高い和歌山産の生地では装飾的な意味しかないからです。
機能的な面では、衿と裾のリブ付け、アームホールにまたぎ二本針ステッチを採用し、堅牢性を向上。後衿ぐりには、表地と同じ背当てを着けて上質に仕上げました。裾のシルエットは腰の留まり位置を調整でき、ユニセックスで着られるパターンとなっています。
前作のグレースウェットと比べ、袖幅をほんの少しゆったりに改良。肉厚生地でもスマートに着られます。
フーディ フーディは、防寒機能を残し、しっかり被れるサイズ感のフード、スピンドルは無くても様になるミニマルなデザインに。必要であれば、好きなものを入れてもらえるように中央の仕切りはあえてつけずに、一般的なものよりやや大きめのカンガルーポケットがポイントです。
クルーネック クルーネックは、ややタイトめの衿ぐりで、リラックス感のあるユルさよりも、少し緊張感が漂うインテリジェンスを意識した設計に。Tシャツはもちろん、シャツの上からも着られるよう、カジュアルさを残しつつ、横編みセーターのような上品な雰囲気に仕上げました。
オレンジマウス&織ネーム
「和歌山大莫小」のブランド織ネームは、高級感のあるグログラン組織で、ミシン縫いではなく手付け4点留め始末。左脇のピスネーム、通称「オレンジマウス」は和歌山の特産物からイメージしたカラーリングで、スマイルマークがモチーフとなっています。
和歌山大莫小は素材にフォーカスする企画です。アイテムはごくシンプルな無地のTシャツやスウェット。素材感を伝えるため毎回取材を重ねて写真と文字にしていますが、やっぱり実物をお見せしたい! 百聞は一見に如かず! そんな思いから、和歌山大莫小は不定期にPOP-UPストアを開催しています。製作したニッターやデザイナー、私たちBeginスタッフが店頭に立ち、和歌山ニットの魅力を直に伝える場を作っています。
2022年秋には米・ニューヨーク、2022年末〜2023年4月にかけては台湾の3か所でPOP-UPストアを実施。和歌山大莫小のオリジナリティ&バラエティに富むコレクションは目の肥えた海外ユーザーからも高い評価をいただきました。