STRONG BASIC
ファッションのプロたちに学ぶ。新鮮な【ベーシックコーデ】の作り方とは?
もっと上手に楽しむための“ベーシックのアップデート法”座談会
地味? マンネリ? どうやったら新鮮に着こなせる? ベーシックを着こなすヒントを異業種でトーク。服を作る人、組む人、記事にする人の視点から語りました。
(左)ライター 間中美希子さん
ファッションについて書くことが多いライター。兄妹誌ビギンからこの道へ。ララビギンには第一号から携わり、ベーシック沼にはまり続けている。
(中)スタイリスト 新田アキさん
今どきベーシックの伝道師として、リアルなスタイリングに落とし込む手腕には編集部員も太鼓判。ララビギンを通じて知ったパラブーツを偏愛する。
(右)ビームス ボーイディレクター 浅山風子さん
アメカジ好きな家庭で育ち、同ショップスタッフやバイヤーを経て2022年に現職。長くつきあえるベーシックを愛する姿勢は、ボーイな女のお手本。
作り手が考えるコーデの脱マンネリ法
間中 ベーシック派っていつも同じ格好に見られることもありますよね。浅山さんはベーシックでも新しさのある服を、毎シーズン、どうやって作っているんですか?
浅山 王道のベーシックをベースに、ちょっとだけ変化をつけています。こだわりはサイズ感。アメカジはジャストサイズだとコスプレに見えたりもするので。今なら少しオーバーサイズや短丈で旬な抜け感を出しています。
新田 今どき感のあるビームス ボーイの服は、スタイリングですごく重宝していますよ。
浅山 短丈にしてもただ流行りだから短くするのではなく、“途中で編むのを止めちゃったニット”などワクワクするストーリーを考えます。私たちは大切にされてきた服が大好き。だからこそ、誰かに愛してもらえるような物語のある服作りを目指しているんです。
浅山さん「ストーリーはファッションを面白くする」
間中 それって雑誌作りにも似ていますね。
新田 そういう服大好き! 確かエンジニアド ガーメンツの別注アウターにも、隠れた物語がありましたね。
ビームス ボーイ×エンジニアド ガーメンツのコートは、リアルに7通りで着回せる、納得感のあるベーシック。〈こちらの記事より〉
浅山 今季のテーマ、NYの旅から生まれた着回せるアウターは、現地に行ったらスポーツ観戦や大学生協巡りをしてみたいよねと、旅に便利なポケットも充実させました。
間中 ストーリーのあるベーシックは、着こなしのよきスパイスになりそうですね。
スタイリングで新しさを出すには?
新田 スタイリングをするうえで新しさを出したいときも、王道のベーシックに旬なベーシックを一点加えることが多いですね。ボーダーシャツはシーズンカラーを選んでみたり、モカシンは新作の厚底を合わせてみたり。本当にちょっとしたことですけど。
ティンバーランドの定番、スリーアイラグ ボートシューズに厚底が登場。ちょっとした変化だけど、すごく新鮮。〈こちらの記事より〉
浅山 ちょっとしたことじゃないと、ベーシックからブレてしまいますしね。
新田 そうした旬は、展示会やプレスの方との会話からつかんでスタイリングに生かしているので、ぜひララビギンを参考にしてほしいですね。でも服を買うだけでなく手持ちの服でも鮮度は出せますよ。
新田さん「一点は旬の香る新しいアイテムを」
間中 具体的にどうすれば?
新田 素材で季節感を出すんです。クローゼットからアウターを引っ張り出して「この冬もまたよろしくね」って羽織るだけでもワクワクして、新鮮味のあるコーディネートになりますから。
浅山 確かに心の持ちようでアップデートはできますよね。
アップデートのヒントは名著にも
間中 心の持ちようといえば、参考になるのがこの本『チープ・シック』。お金をかけずにシックに着こなすアイデアが満載で、作家・片岡義男氏の訳もおしゃれ欲を刺激します。ファッション原稿のお手本として愛読していますよ。
1977年にアメリカで出版された「チープ・シック」(草思社)は、服好きのバイブル。3人とも愛読者でした。
浅山 その本、私も持ってきました! ベーシックの強さを教えてくれる名著ですよね。ビームスに入社した当時、読んでおいたほうがいいと先輩に薦められました。
新田 そのときどきで面白く感じるポイントが変わるから、いつ眺めても発見がありますよね。ファッション好きのバイブルだと思います。
間中 この本で一番好きなのは、黒いニットを小物でアレンジしながら毎日着ている女性の話。そうした自分の王道を見つけることもアップデートにつながるかなと、名作といわれる時計を手に入れたりもしました。おばあちゃんになっても愛用できるはずと。
文字盤がくるっと反転するジャガー・ルクルト。スポーツ時にガラス面を守るために生まれた、用の美の時計。〈2016年8・9月号〉
ベーシックは地味? そんなの関係ない!
浅山 やっぱりベーシックって、ブレないからこそかっこよくて心地いいんですよね。私にとっての王道は、50年代のスウェットやネイティブアメリカンジュエリー 。ジュエリーまで気を遣っていると、デニムスタイルも強さが増す気がします。得力がありますしね。
一見、個性的なネイティブアメリカンのジュエリーも、ベーシックなアイテムだけにどんな服にもなじみよし。
間中 新田さんの王道といえば以前誌面でも紹介したパラブーツですよね。
間中さん「絶対的な一品がブレない軸になる」
新田 買い足しながら一緒に歳を重ねている靴は、もはや恋人感覚。呑んで帰った夜もシューキーパーは必ず入れます。お手入れをさぼると靴が機嫌を損ねちゃうので。
浅山 靴への愛を感じますね。
間中 耳が痛いです(苦笑)。
浅山 ベーシックは地味に見られがち。でも「そんなの関係ない、一本芯の通ったところが素敵なんだよ」と声を大にして言いたいですね。
新田 “今日の私はこんなストーリー”と、自分なりに楽しんで着ていれば、その人のスタイルになるものだから。
間中 我が道を行こう!と。まさにボーイな女に贈りたい言葉ですね。
連載
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1950年代当時、ハリウッド俳優はテーラードスーツが主流の時代、スウィングトップ、Tシャツ、デニムという、LaLa Begin的にも大好きな、ベーシックなカジュアル姿で異彩を放った俳優ジェームス・ディーン。異端児ともいわれましたが、きっとそれが「自分らしい」と思っていたから着ていたのだと想像します。着ていることが心地よくて、自身が魅力的に映る服。きっと彼はそのことをわかっていてそのスタイルを貫いたのでは。そんなディーン先輩がこんな言葉を残しています。「優しさこそ、本当の強さだ」。便利、快適、上品、万能。いろんな強さとともに、これからの自分にそっと手を差し伸べてくれるストロングベーシックを、いざ探しに!
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※掲載内容は発行時点の情報です。
[LaLa Begin 2024年 AUTUMN号の記事を再構成]photo: Keiichi Suto, Kousuke Matsuki, A yako Kubota, Saori Fushimi, Shunsuke Musashi, Saori Nakajima text: Shinji Hashimoto, Mikiko Manaka, Shinsuke Isomura, Aki Ma ruyama, LaLa Begin styling: Makoto Fukuda, Aki Nitta hair&make-up: Miyuki Nakamura, Kei Yamazaki model: Saya Ichikawa, Akari Ushioda, Yoshiaki Takahashi illustration: TOMOYA