やっぱり青が好き
こだわりのサンゴブルーが美しい【やちむんの器】なら、おうちのから揚げもごちそうに!
[LaLa Begin 2018年 8-9月号の記事を再構成]
やちむんが好き!
Blue dictionary
Sango Blue【サンゴブルー】
[用語]さんごぶるー
少し緑がかかった金城さん独自の青色のこと。沖縄の青く緑がかったサンゴ礁にも通じる色は、ファンの間で自然に“サンゴブルー”とよばれるように。釉薬は薄いとかすれやすく、濃いと流れ落ちやすくて勘所が難しいとか。また発色には焼成温度や気候なども関係するため、安定したサンゴブルーを維持するのは至難のワザでもある。
ぴったり1150℃でしか出ないサンゴブルーに夢中
やちむんとは沖縄の言葉で焼き物のこと。金城有美子さんは温かみのあるサンゴブルーの器で今、注目のやちむん作家です。
陶芸家
金城有美子さん
\この青をつくるのに6年かかりました/
1967年沖縄生まれ。沖縄県立芸術大学大学院を修了後、土器やモノトーンの器といった渋めの作風を経て、島の風景を映したようなパステルカラーや青のシリーズをスタートし、一躍人気作家に。2010年には那覇市内に作家仲間とクラフトショップ「ティトゥティ オキナワンクラフト」をオープン。現在は郊外のアトリエにて猫と暮らしながら作陶する日々。
“この器に盛ればおうちの唐揚げがごちそうに見えますよ”
「以前は通好みの渋い土器ばかり作っていました。きっかけは子ども向けのワークショップで使ってみた、明るい色の釉薬。意外にしっくりはまって作り始めたのが、パステルカラーのシリーズです。すると今度は大人の方から、落ち着いた色物もほしいというリクエストが。そこで院生時代のテーマだった青を思い出しました」
当時は思い通りに発色してくれない、もどかしい色だったそう。
「試作を始めて6年目に1150℃で焼くと理想の青になることがわかりました。ただし、誤差1、2℃内に留めないと全く違う青になる。うっかり寝過ごしてダメにしたこともありました。そういうときって夢の中でも不安を覚えるんですよね。何かおかしいぞって(笑)。面白いものを作るにはこんな失敗も必要だと思っています」
試行錯誤の末、6年目に安定して出せるようになったサンゴブルー。ただ、寒色の器だけに不安もあったそう。「料理教室に提供したところ先生が太鼓判。いろんな料理にも合うことを確信しました」。大小の平皿をはじめ、ボウルやマグカップなどバリエーション豊富に揃う。皿2000円~、カップ3000円。(ティトゥティ オキナワン クラフト)
青い器は実際どう使えば?
「そうめん、サラダ、ガスパチョ何でも合います。白い器は盛り付け時に余白を生かしたり彩りを考えたりとプロ級の腕が必要ですが、パンチのきいた青はお助けカラー。一点投入で食卓が華やいで、唐揚げだって素敵に見せてくれますよ」
明るい青を出すために使うのは信楽の土
この日はボウル作りを披露。縄状の土をくるくる巻き上げて高さを出していく。「沖縄の土は鉄分が多くて、発色が曇りがち。澄んだ青を出したいので、滋賀・信楽の白土を取り寄せています」
同じサンゴブルーでも釉薬によって青の印象が変わる
微差は大差、ここが作家の腕の見せどころ。釉薬に鉄分を多く含ませるほど緑がかった優しい青になる。ちなみに質感差は土の違い。粗い土だとザラザラになります。
模様もすべて手で入れる
\UP!/
「黒を塗ったクレヨン画を楊枝で引っかく、あの技法。手描きで温かみを表現します」5200円。(ティトゥティ オキナワン クラフト)
工房は築45年の古民家
\UP!/
ここは日本!? 趣のある素敵なアトリエでおもてなししてくれたのは、金城さん自作のカラフルなマグカップにたっぷり注いだ冷たい麦茶。「母は昔ここでレストランをやっていたんですよ」
連載
やっぱり青が好き
色に溢れ、どんな色だって好きに選べる時代ですが、青ってじつは、私たちの最も身近にある色かも? デニムやシャツの定番色だし、ジャパン・ブルーって言われるくらい日本人とは縁が深い。ここらで一度、青を見つめ直し、好きな理由を掘ってみよう。
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※掲載内容は発行時点の情報です。
[LaLa Begin 2018年 8-9月号の記事を再構成]写真 池本史彦 PYRTE FILMS / 竹内一将 STUH 文 間中美希子/ 灰岡美紗 スタイリング 長坂磨莉 イラスト 川合翔子