Begin Market(ビギンマーケット) COLUMN ARTICLES リアルさがすごい! ニットデザイナー【編み物☆堀ノ内さん】の偏愛話を聞きました

2024.08.13

偏愛レボリューション

リアルさがすごい! ニットデザイナー【編み物☆堀ノ内さん】の偏愛話を聞きました

[LaLa Begin2021年 2-3月号の記事を再構成]

偏愛レボリューション~Vol.5「インパクト★編み物」編み物☆堀ノ内さん

数年前、このニットたちの存在を知った時の衝撃たるや。聖子ちゃんに王さん、やっさんにたのきんトリオ……なんという絵柄のチョイス!

個展に足を運んで実物を見てみると、そのクオリティにさらなる衝撃。どんな人が作っているんだろう、どれだけの手間が掛かっているんだろう。一般的な編み物からイメージするほっこり感とは真逆の、“狂い編みサンダーニット”なるキャッチコピーも含め、ずっと気になっていた偏愛ビト。念願叶って今回はニットデザイナーの編み物☆堀ノ内さんに、お話を聞きました。

経験はゼロ。でも「作りたい!」の気持ちが止まらず……

間近で見てもすごい完成度ですが、もともと編み物とか手芸が得意だったんですか?

「いやいやまったく。編み物どころか簡単な裁縫もしたことなかったんです。今から10年ほど前に、ネットで海外のミュージシャンやロゴが描かれたヘンテコなセーターをまとめたサイトを見て、あ、かわいい、これ作りたい!って急に思いついたんです」

まずほしい、じゃなくていきなり作りたい、だったんですね。

「グラフィックデザインをやっているので、編み図なら作れそうだぞと。あとは編む技術を習得すればって思っちゃったんです。改めて考えると、なんて面倒なことを(笑)」

経験ゼロなぶん、こういうものを編むには相当な技術と時間が要るんだろうなっていう先入観もなかったのがよかったんですかね。

「それでいくつか教則本を読んだり、橋本治さんの本(下写真)に、まさに僕がやりたかったことだ!と影響を受けたりして、最初の5着は手編みで作りました。1着目はブルース・リーです」

『男の編み物ー橋本治の手トリ足トリ』は超高値がついている伝説の編み物本。

えええ、いきなり絵柄ニットを?

「だからめちゃめちゃ時間かかりました。さすがにこれはもう無理だ、機械編みにしないと、と思って。でも編み機の使い方を教えてくれる本やサイトがなくて、習える先生を探して、千葉のカルチャースクールに半年間通って覚えました。人気の教室だったんですけど、男性も同世代もまったく居なくて、マダムたちに交じって習っていました」

この横山やすしニットも初期に手編みした思い出の作品。上写真の聖子ちゃんも。ちなみに一番最初の作品はブルース・リー。

機械編みの技術は習得したものの、絵柄の部分はやっぱり手編みするしかないと言われて、同志も居ないなかで、じゃあ手編みできるレベルでいいかな、なんなら編み物熱が冷めちゃったりはしなかったんですか?

「じつは始めた頃から、後々はグラフィックデザインよりこっちを生業にしていきたいっていう思いがあったので、どうにかしてできないかと試行錯誤して。色々教わってるうちに、これは面倒くさいだけで、やろうと思えば機械で編めるぞってことに気づいたんです。そこからは一気に」

編みたいのは純粋に“好き”なもの

堀ノ内さんがニットにする様々な絵柄モチーフは、昭和のエンタメ、ミュージシャン、映画のビジュアルなど、チョイスがユニークですが、編みたいものの基準やこだわりは?

「純粋に、“好き”ってことですかね。中でも若い頃に好きだったものって思い入れの強さが違うんですよね。何を編もうって考えたときに、つい頭に浮かぶのは今流行ってるものよりも、強烈に印象に残ってる人や写真なんです」

人工芝の緑に映える王貞治。肌ツヤの表現にはこだわり

未経験から独学で“好き”を編んできた堀ノ内さん。次第に作品数が増え、個展などをしていくうちにファッションや音楽系の業界を中心に評判が広まり、近年は色々なリクエストやコラボのニット作品も発表しています。雑誌などの企画で木村カエラさんや草彅剛さんが着用したり、岡村靖幸さんからのオファーでツアーグッズとして製作したニット(下写真)も話題に。

「岡村靖幸さんが僕の作品を気に入ってくれてコンタクトがあり、ツアーグッズとしてこのニットを50着限定で作りました。これはご本人のサイン入りです」

過去にメディコム・トイとのコラボで製作した『時計じかけのオレンジ』『シャイニング』のニットスカーフ。中央にも絵柄があって、広げるとインパクト大。

「まだまだ編み物にしたい素敵な人がたくさんいて、もっと時間がほしい! オーダーの依頼や周りからもらうリクエストに刺激を受けてます。販売してほしいって声も多いので、バッグやポーチなんかも作ろうかな。何かアイデアありますか?」

ありますあります、ぜひララビギン別注を作りたいです!

\できあがったララビギン別注をチェック/

編み物☆堀ノ内/アミモノホリノウチ LaLa Begin別注 秋田犬のアートなニットポーチ
9,680円(税込)

ニットデザイナー。グラフィックデザイナーでありながらまとめサイトで見かけたニットに惚れ、2012年頃よりニット制作を開始。 Instagram:@amimono_horinouchi

調査報告

もともと編み物の素養があって今の作風に至ったのかと思いきや、まったくの未経験でいきなり編み始めたというのは驚きでした。じわじわと沼にハマるのとは少し違う、何かこれだ!っていうものに出合った時の集中力や行動力って理屈じゃないんですよね。今後の作品も楽しみです☆

※掲載内容は発行時点の情報です。

[LaLa Begin2021年 2-3月号の記事を再構成]写真/武蔵俊介 インタビュー・文/オモムロニ。

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