Begin Market(ビギンマーケット) COLUMN ARTICLES 【レザー豆知識】皮と革の違いって? “鞣す”ってなに? 気になるレザーのウンチク教えます!

2024.07.20

永く愛せる名品革図鑑

【レザー豆知識】皮と革の違いって? “鞣す”ってなに? 気になるレザーのウンチク教えます!

[LaLa Begin 2021年 10-11月号の記事を再構成]

革についてどれくらい知ってる?

レザーについて、まずはお勉強しましょう!

世にいうレザーアイテムの多くは牛革です

突然ですが、問題です。皮と革の違いってわかりますか? 読み方が同じなので混同しやすいのですが、じつは区別して使われています。“皮”はいちばん外側の膜や動物から剥いだ生皮の状態をいうもので、皮を使える素材に加工したものを“革”と呼んでいます。ただし、動物の皮はすべて革として使えるわけではなく、革として使えるのは背骨のある動物、いわゆる脊椎動物のみ。一般的には家畜として飼育され、食肉として消費されている動物を原皮にしています。よく使われる動物の革を順に紹介していきましょう。

● 牛 図1

実用的に使われる革のうち、もっとも利用されているのが牛革です。丈夫で厚みがあり、大きな革が取りやすいというメリットがあります。ただし、牛革でもどの部位を選ぶかで性格が変わってきます。ショルダーは激しく動くから強靭で、馬具やベルトに使われます。ベリー(お腹)は伸縮が激しい部位のため、薄くて伸びやすく裏地に使われることも。背中からお尻にかけた大きな部位がバットです。繊維が引き締まっていて伸びにくく丈夫なので、メイン使いされます。(図2 参照)また在育期間によって、呼び方や特徴も変わってきます。(図3 参照)

● 馬

牛革に似ていますが、それよりもやわらかく表面がなめらか。なかでも馬のお尻からとれるコードバンは、繊維の緻密さや美しい光沢が持ち味で、高級革の代名詞になっています。

● 豚

国内で唯一自給自足ができる革です。薄くて軽く、摩擦に強く耐久性は抜群。表面に規則的に並んだ3つの毛穴の模様が浮き出るため、独特の表情があります。

● 羊

軽くてやわらかく、なめらかな肌触りでジャケットなどにもよく使われます。子羊はラム、生後1年以上の羊はシープと呼ばれます。

● 山羊

繊維が細かく、丈夫でしなやか。生後半年以上の山羊を指すゴートの革が多く使われています。表面は天然のシボによる模様があり、革らしいナチュラルな風合いがあります。

● 水牛・鹿・エキゾチックレザー

バッファローレザーといわれる水牛、ディアスキンと呼ばれる鹿などの哺乳類も革に使われています。また、ワニやヘビ、トカゲ、ダチョウといった、家畜として飼われている動物以外のエキゾチックレザーと呼ばれる革のジャンルもあります。

革を柔らかくする、と書いて“鞣なめす”と読む

動物の皮は放っておけば腐ってしまうし、腐らないように乾燥させてもカチカチに固まって使いものになりません。そこでどうするかというと、皮を“鞣す(なめす)”ことで素材として使えるようにします。革を柔らかくする加工と腐敗を防ぐための処理をして革へと作り変える。これがなめしと呼ばれる作業で大きく2つの方法があります

\“鞣なめす”ってなんだ?/

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● クロムなめし (経年変化しない)

塩基性硫酸クロム塩を使う方法で、ドラムと呼ばれる大きな回転体の中で一気になめします。短時間で終わるので、大量の革を作ることができます。なめされた革はやわらかで軽く、伸縮性も◎。クロムなめしをした革の色は青みがかった白色で染料に染まりやすいのが特徴です。色や柄を鮮やかに表現することができ、バラエティ豊かな革アイテムが作れます。

● タンニンなめし (経年変化する)

果物を食べて「渋っ!」と感じることがあるのは、タンニンのしわざ。そのタンニンを使うなめし法で、古くから行われている伝統的な手法です。ミモザやチェスナットといった植物の樹皮から採取されたタンニンを使います。タンニンには動物の皮のコラーゲン繊維をぎゅっと収縮させる力があるため、ハリ・コシのある仕上がりに。タンニンの発色や日焼けによる色の変化から経年変化が起こり、いわゆる“味”が生まれやすいのが特徴です。使うごとに色が濃くなっていくので、革を“育てる”楽しさがあります!

加工によってキャラ変する!?

なめされた革の仕上げに“お化粧”を。イメージするアイテムに合う質感や色を加える加工を施すということです。革は大きく2層に分けられて、表面を“銀面(ぎんめん)”、裏面を“床面(とこめん)”と呼びます。加工は基本的に銀面に施しますが、スエードは床面に対して行います(図4 参照)。仕上げや染色にはさまざまな種類がありますが、ここでは代表的なものをピックアップ。

● ヌメ革 図5-1

ヌメ革はタンニンなめしをしただけで、染色や表面処理をほとんど施さずに仕上げた革です。ファンデーションを塗っただけの“すっぴん”に近いイメージ。

● オイル 図5-2

仕上げの際に革に大量のオイルを染み込ませ、しっとりとした質感に仕上げる方法もあります。使い込むほどに内部の油が表面に出て、美しくエイジングします。

● ガラス 図5-3

革をガラス板やホーローに張りつけて乾燥させた後、銀面を削って合成樹脂でコーティング。つるっとした表面とつやつやとした光沢のある美人キャラ。

● シュリンク 図5-4

薬品を使ったり熱を加えたりすることで繊維を収縮させてシボを出す方法です。ぎゅっと寄ったシボ目で上品な印象になり、傷が目立ちにくいという長所も。

● ブライドル 図5-5

タンニンなめしの革にロウを含んだオイルを通常の数倍塗り込んだもので、抜群の強度を誇ります。表面に白く浮き出ているのはブルームと呼ばれるロウで、ブライドルレザーの証しでもあります。

● 型押し 図5-6

ローラーや鉄板で銀面を加熱・加圧して、模様の型を押し当てる加工です。エキゾチックレザーのシボに似せたものから幾何学柄まで様々なデザインがあります。

● スエード(バフがけ・ヤスリがけ)図5-7

床面にヤスリがけやバフがけを行って起毛させ、毛足を切りそろえたもの。ちなみに、銀面を削り起毛させたのがヌバックです。

\なんだか分かってきた!/

※掲載内容は発行時点の情報です。

[LaLa Begin 2021年 10-11月号の記事を再構成]写真/押尾健太郎 武蔵俊介 
文/間中美希子 名知正登 桐田政隆 スタイリング/野崎未菜美 ヘアメイク/畑江千穂 モデル/高橋佳子 イラスト/ Mamedori

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