装い今昔物語
【原宿・表参道・青山・代官山】今では伝説となったお店も⁉ 昔の雑誌で紐解く東京の街
原宿・表参道・青山・代官山 昔の東京おしゃれマップ
いであつこ
仏・イボルンヌ大を首席で卒業。平成服装女子学院トレンドマスコミ学部准教授。服飾誌研究家として活躍中。コラムニストのいであつしとは双子の兄妹。
パリへ留学する前、東京の代官山の古いアパートメントで3年ほど暮らしていました。今ではそれも懐かしい想い出です。
東京は麻布台ヒルズなど次々とおしゃれなエリアができて変わり続けていますが、原宿や表参道、青山や代官山など、おしゃれなエリアをイラストマップで紹介するファッション雑誌が昔もたくさんありました。今回はそんなおしゃれで懐かしい東京の街を当時の雑誌で案内しましょう。
1975年1月20日号の『an・an』を紐解いてみると、「原宿全店図鑑」というタイトルで「人気ブチックから露店まで924軒徹底調査」と、表参道や明治通り、青山通り、神宮前2丁目〜5丁目まで細かく紹介しています。「ブチックから露店まで」というのがエモいですが、原宿の「MILK」や、表参道の「ゴローズ」や、明治通りの「マドモアゼルノンノン」、青山通りの「ハリウッドランチマーケット」など、今では伝説のお店も載っています。
74年の『non-no』4月20日号も紐解いてみましょう。「お買い物はこれを持って。徹底保存版東京ショッピングマップ」と題して、原宿・青山をイラストマップで案内しています。原宿を「ヤボな大人にはちっとも面白くない街。青春を忘れた人にはわからない街。若者のファッションの流行は原宿からといっても過言ではありません」という紹介がエモすぎます。
80年に青山にあったハリウッドランチマーケットが移転して、「ヒルサイドテラス」の前にオープンすると、代官山が東京の最新スポットとして注目されるようになりました。
83年4月8日号の『an・an』を紐解くと、「犬を散歩している外人さんがいたり、スタイリストがタクシーから降りてきたり、住宅街と新しいお店が同居するおしゃれな街、代官山」と、イラストとマップで案内しています。
82年12月3日号の『Olive』も紐解いてみましょう。「彼との待ち合わせは『メイフェア』の2階のカフェで。話題のセレクトショップ『ヌヌシュ』をのぞいたら、『ハラッパA』でキャンディを買っちゃいました」と、代官山のデートコースを紹介しています。
80年代後半はDCブランドブームで、代官山にDCブランドの旗艦店が次々とオープン。88年の『Hanako』11月3日号を紐解くと、「どうせなら迷わず行きたい恵比寿・代官山マップ」と題して、八幡通りにできた「JP・ゴルチェ」のビルや、「ビギ」や「メルローズ」、旧山手通りの「49AVジュンコシマダ」や「トキオクマガイ」などが載っています。
90年代は代官山にも都市開発の波が押し寄せて、東急東横線の代官山駅が移転して様変わりします。96年の『Zipper』1月号を紐解くと、「おしゃれ人の崇拝ショップガイド」という特集で代官山ガイドマップが載っています。当時はまだあった『同潤会アパート』が「もうすぐなくなっちゃうんだって」と記されていますね。今の代官山しか知らない人は信じられないでしょうが、当時の代官山にあった同潤会アパートには、銭湯もあったんですよ。
(おせっかいな)ファッション用語辞典
今では伝説のお店
「MILK」のデザイナー大川ひとみは裏原宿の先駆者で藤原ヒロシも出入りしていた。「ゴローズ」は高橋吾郎のネイティブアメリカンジュエリーの店。「マドモアゼルノンノン」は荒牧太郎が始めたブチック。
ヒルサイドテラス
建築家の槙文彦が設計した代官山のランドマーク的な建物。A~H棟まであり、C棟にあった「トムズサンドウィッチ」はBLT(ベーコンレタストマト)が有名で、田中康夫の小説『なんとなくクリスタル』にも出てきた。
JP・ゴルチエのビル
「オンワード樫山」が建てた地下1階~3階まで1棟丸ごとデザイナーのジャンポール・ゴルチェのブランドを揃えたビル。代官山駅を降りて八幡通りで信号待ちしていると、必ずみんなが見る当時の代官山のランドマークだった。
※掲載内容は発行時点の情報です。
[LaLa Begin 2024年 4-5月号の記事を再構成]text : Atsuko Ide comic : Takahiro Shimada