マジカルファクトリーツアー
ステンレスの割れない漆器って⁉ 保温・保冷もできる漆タンブラー「KISSUL」を取材しました!
漆器と聞くと「高級そう」というイメージがあり、なかなか手が届かないものだと思っていました。お手入れも面倒だしハレの日専用にして普段は大切に棚の奥の方へ……と思っていたら、ステンレスの割れない漆器がある?しかも保温・保冷もできる!? そんな魔法のような漆タンブラー「KISSUL」を作っているのが、モノ作りの匠たちと連携し、日用品の製造・販売を行っている合同会社COCOO。
今回は、そのCOCOOの製品を共同開発・製造する京都の老舗漆屋「佐藤喜代松商店」にて取材をしてきました。
担当 トリイ
COCOOの漆タンブラー「KISSUL」
@京都市右京区西院
目的:食洗器で洗える使いやすい漆器がほしくて
素敵な食器を見つけるとつい衝動買いして食器棚の肥やしになってしまうことが多々。デザインも使い勝手もいい食器を探していたところ、これ以上ないものに出会えました。
古くから日本の伝統文化を支えてきた漆は、優れた抗菌性と強度を併せ持ち、機能性、安全面も素晴らしく、食器に使うにはもってこい。そんな漆のよさをもっと広めたいという思いで魔法瓶に漆を塗るということを考えた代表の北山浩さんと共同発起人の前田愛花さん。
左 代表・北山 浩さん
右 共同発起人・前田愛花さん
お茶を「喫する」ということが由来の「KISSUL」。「作り手である職人さん、使い手のお客様、取材してくださる伝え手の方々、みんなでまずはお茶を喫して繋がっていければうれしいですね」と、北山さん。
しかし漆はその性質上、ステンレスに塗るのは至難の業。「いくつもの漆屋さんに掛け合うも断られ続けましたが、佐藤喜代松商店さんは二つ返事でOK をくださったんです」と話す前田さん。漆をアカデミックに研究している佐藤喜代松商店とタッグを組んだからこそ実現したこの商品。
1│漆を精製
\水分を飛ばしてなめらかに/
漆の木の樹液をフィルターで濾し、その後こちらの専用の鉢で熱を加えながら攪拌して漆を精製する。黒漆の場合は鉄を入れて化学反応で黒くするそう。ツヤのあり・なしもこの攪拌の加減で調整。
2│塗る
\ステンレスの表面を荒らすことで漆を塗りやすく/
表面を荒らしたステンレスタンブラーに漆を塗っていく。写真右が荒らす前、左が後。その日の気温や湿度によって漆が乾くスピードが変わりシワができてしまったりするため、天気によって漆を使い分けている。
3│地の粉をふる
\砂岩を砕いて地の粉に。より丈夫に/
漆を塗った後は、地の粉をふってより丈夫にする「蒔き地」という作業を行う。地の粉は、京都の山科で採れる砂岩を砕いたこだわりのものを使用。
4│焼く・塗る
専用オーブンに入れて、180℃で20分焼く。両面を1度には焼けないので、ひっくり返して内側も焼くことが必要。
\厚すぎず薄すぎず、塗り方にも匠の技が光る/
焼き終わったら次は色漆を塗っていく。この「塗る」→「焼く」の作業を外側と内側で計6回も繰り返すそう。佐藤喜代松商店 レプロン紗綾加さん
完成したアイテムがこちら!
\ロゴを入れて/
天然素材の漆ならではの風合い。抗菌効果だけでなく、強い酸やアルカリもOK。左から紫紺、藍、白茶 Φ7.9×H7.2㎝ 容量210㎖ 各7920円(COCOO)
「漆」×「真空魔法瓶構造」のハイブリッドで、保温・保冷機能はもちろん、食洗器でも洗えて、ガシガシ日常使いできちゃう。傷がついても漆で修理をして使い続けられるというサステナブルさもうれしい。マグカップ同様、いや、それよりも使い勝手がいいネオ漆器。これから我が家の食器棚の一軍入りすること間違いなしです!
漆ってどうやってつくられるの?
漆は、ウルシの木の幹に鎌で傷を入れ、採取した樹液から作られます。乳化しているので全体は乳白色ですが、空気に触れるとだんだん茶褐色に。その色の変わる速さなどを見てどのように精製して扱うかなど原料の見極めをするそう。
連載
マジカルファクトリーツアー
大好きなモノのことをもっと知りたい。服や時計、靴などのアイテムがどうやって作られているのか調査するべく、編集部員が生産現場へレッツゴー!ここでしか知れないレアな情報満載でお届けします。
連載目次はこちら
※掲載内容は発行時点の情報です。
[LaLa Begin 2024年 2-3月号の記事を再構成]photo : Ayako Kubota text : LaLa Begin