ブランド研究【パラブーツ】
「パラブーツ」のブランド名、実は「パラ」という港の名前が由来って知ってた?
青年が辿り着いた〝パラ〟という港
フランス南東部、冬の街として知られるイゾーに、レミー・アレクシス・リチャードという青年がいました。オーダー靴の工房を開き、軍の人や労働者からお願いされた靴を作ったり、自分でデザインした靴を持ってパリの上流階級に売り込んだりしていました。
1926年、旅行でアメリカに渡っていたレミーさんはそこで運命的な出合いを果たします。それがゴム底のワークブーツでした。その頃、ヨーロッパでゴム底の靴はほとんどなかったので、とにかくびっくりしたのです。
レミーさんは底材の原料となる天然ラテックスがブラジルのパラ港から出荷されていることを突き止めます。翌年、ただちに輸入をして、登山靴のためのゴム底を作り始めました。
たちまちヨーロッパ中にその評判が知れ渡り、木底の靴の代わりになる一足を手に入れたのです。
その後、工賃が安く上がる海外に工場を移すメーカーも多いなか、メイド・イン・フランスを貫き、今や世界で唯一ラバーソールまでを自社生産するブランドになったのです。
名前はブラジルのパラ港からゴムを仕入れていたことに由来
ブランド名は、ラテックスの一大生産地であるブラジルの積み出し港「パラ」にちなんで名づけられました。パラ港から直輸入する際に取引された内容の記録が残っています。その元金なんと32,500,000ドル!
左:MICHAEL 右:CHAMBORD
CHAMBORD(シャンボード)
本来は狩猟用に使う靴として作られたモデルで、かつてのフランス国王フランソワ1世が狩猟の際に滞在するために建造したシャンボール城がその名の由来。つまみモカタイプのボリューミーなラウンドトゥが特徴です。
MICHAEL(ミカエル)
創業者の孫にして現社長であるミッシェル・リチャード氏の誕生を祝い、その名を冠したモデルとして1945年に誕生。
「ミカエル」は、ミッシェルのラテン語読み。パラブーツの名前を世界に広めた記念碑的モデルです。
レミー・アレクシス・リチャード
1878年生まれ。フランス・イゾーの農家出身で、靴工房で革の裁断師として働きながら独立を決意。並々ならぬ行動力で靴製造業に乗り出し、リシャール・ポンヴェール社を設立。世界を驚かせた革靴は氏の閃きによって生まれました。
パラブーツに関するお問い合わせ先/パラブーツ 青山店 ☎03-5766-668
連載
ブランド研究【パラブーツ】
ボーイな女の足元にパラブーツの靴があるのを頻繁に見かけるようになった今日この頃。タフにはけて、フランス産ならではの品のある風貌に魅了される人も多いのでは?知られざるエピソードから、靴好きを唸らせるこだわりの製法まで、とくとお見せします。
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※掲載内容は発行時点の情報です。
[LaLa Begin2018年4-5月号の記事を再構成]写真/久保田彩子 伏見早織 構成・文/名知正登 イラスト/越井 隆